うぐいすの音

17歳の女子が運営しているブログ。本のレビューなどしていきます。

「ぼくはイエローでホワイトでちょっとブルー」を読んでみました!

 こんにちは。今回は、本のレビューをしたいと思います!

 私が学校図書室で借りた本は、ブレイディみかこさんの「ぼくはイエローでホワイトでちょっとブルー」でした。もともと、この本のことは全く知らず、父が「是非読みたいので借りてきてほしい」と言ったので借りた本です。(本を返す日までには父は忙しくて読めないらしく、結局私が読んだだけで終わってしまいましたが…)

 この本は、本屋大賞のノンフィクション本大賞をとったもので、中学生男子の日常を母親の側から描いたものです。英国の「元底辺中学校」に通い始めた中学生男子の「ぼく」が、いろいろな差別に突き当たり、逃げることなくしっかり考えていく。私が一番びっくりしたのは、これ全てが実話だということです。実際にある中学校に実際に通っている同年代の男子の話。だからこそ、リアリティをもってとらえることができました。

 日本人とアイルランド人の親を持つである「ぼく」は、エンパシー(共感すること)を「自分で誰かの靴を履いてみること」だと答えています。実際に、他の人の立場に立って物事を考え、他人に同情することができたり、他人を助けるため知恵をしぼることができたり、とてもかっこいいお子さんだなと思いました。

 もともとカトリックの小学校に通い、生徒会長をしていたいわゆる「優等生」の「ぼく」が、ロックアーティストのアルバムジャケットが壁に貼ってあるような「元底辺中学校」にいく。そこからこのノンフィクションが始まります。「元底辺中学校」は、音楽・ダンスなどの生徒の個性を伸ばせる環境を整えたらなぜか成績も上がってきた、という学校です。聞くだけだととても魅力的な学校ですが、「元底辺」だっただけあり、万引きをする子や、超貧困家庭にいる子などいろいろな生徒が集まってきます。これまでは、イエスの教えを大事にしていた小学校にいた彼にとって、新しい中学校は衝撃的なところだったでしょう。それでも、「ぼく」は自分なりに考え、いろいろな差別についての自分の考えをはっきりさせています。

 また、ブレイディみかこさんの行動も、とても知的な考えが多く、自分の芯がしっかりある人なんだろうなと思いました。中国人と間違われ馬鹿にされたときの、日本人としての行動なども、とてもクールだと思います。(ここら辺はぜひ本を読んでみてください!)

 

 印象深かったエピソードの一つに、「アイデンティティ」についてのものがありました。日本人の血が入っている「ぼく」に、親近感を覚え仲良くなろうとする中国人の生徒会長がいました。彼は、「ぼく」のために騒動を起こすほど「親近感」というものがありました。でも、日本に行けば「ガイジン」と言われイギリスでは「チンク(中国人を侮蔑する言葉)」と言われる「ぼく」にとって、その「親近感」は理解できないものでした。

 私も実際、イギリスに行った時に一番学校で仲が良かったのは中国人の友達でしたし、まだ連絡を取っている友達には韓国人も多いです。私にとっては多分、日本人(アジア人)であることは一つのアイデンティティでしたし、同じアジア系の人たちには親近感があったと思います。だけど、アジアの血もヨーロッパの血もあるような人にとってはどうなるのか。そうでなくても、地域によるアイデンティティを持てない人にとって、「親近感」は重くなるだけなのではないか。考え始めると、とても面白いと思います。

 もう一つ面白いエピソードがありました。「ぼく」と彼の母に対して「ニーハオ、ニーハオ」と言ってきたホームレスに対しての「ぼく」の反応です。ニヤニヤしながら「ニーハオ」と言ってきた男に対し、「ぼく」はこう考えました。

 イギリスの友達と歩いていると言われず、母と歩いていると言われる

→3つ考えられることがある。

  1. 友達と一緒にいると東洋人に見えず、母親とだと東洋人に見える
  2. 友達の中にはガタイのいい人もいるし、全員男だから殴られる危険性もあるけど、母親とだと「女と子供」と言う弱いコンビだから言われる
  3. 中国で挨拶すれば、フレンドリーと好印象に思われ、お金をもらえると思った

 この3つが「ぼく」の考えたことです。私は本を読んで、このホームレスは東洋人であることを馬鹿にしているんだと思い込みました。けど、主人公は「馬鹿にされている」と言う考えだけでなく、「親しみを持つために」という考えを持ちました。正直、3つ目の考えは間違っているのではないかと描写から思えますが、見える事柄のみにこだわらず、あらゆる可能性を考えられるこの子は本当にすごいと思います。客観的に物事を見られる、冷静でいられる、ということの証明でしょう。

 

 私も実際、イギリスにいる時に「チンク」と言われたり、「ニーハオ」と言われたりすることがありました。私は日本人ですが、日韓中の区別などつかないので、たとえ中国人でも「ニーハオ」と言われる事はあるだろうし、それは決して友好的とは限りません。侮蔑的な言葉を使うことの悪さを再認識できました。

 私は差別をしていないつもりでしたが、この本を通して改めようと思った言葉がありました。それは「ハーフ」という言葉です。ただ親の国籍が違うだけで、「ハーフ」や「ダブル」など、他の人と違う言葉をつけられるのはおかしい。いうなら「ハーフ&ハーフ」でいいじゃないか。そうすればちょうど1になる。そう言われると、確かにと思います。もう一般的な言葉で、それが差別になり得ると思っていませんでした。それは、この本を通して学んだことの1つです。

 

 自分の体験なども思い出しながら、この本を読むことができました。私が取り出したエピソード以外にも、LGBTQやFGMなど、いろいろな差別についての「ぼく」の考えが乗っています。もう一度言わせてもらうと、これは全て事実を描いた「ノンフィクション」です。

 最後までお読みくださりありがとうございました。興味を持った方は是非読んでみてください。きっと楽しめると思います。