うぐいすの音

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アルセーヌ・ルパン、かっこいいです…

 こんにちは。そろそろ期末テストも終わるので、終わったら家族で何か食べたいね〜などと話しながら勉強しています。

 

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 今回は、久しぶりにアルセーヌ・ルパンを読んだ感想を書こうと思います。この頃、図書室にあまり頻繁に行けていないのですが、それでも一週間に2冊は図書室でも読もうと思いルパンを借りてみました。

 

 もともとルパンは、小学4年生か5年生の時に読んだことがありますが、2巻ほど読んだだけで、あまり印象には残っていませんでした。ミステリはそこまで好きではなく、ホームズを小さい時から読んでいましたが、他に読んだのはアガサクリスティを何冊かと言う程度です。少しだけ二十面相や他のミステリを読んでいましたが、あまりはまりませんでした。

 

 保育園に通っていた頃の話ですが、家で寝る時に目の前に本棚がありました。その本棚によく表紙を見せるような位置で置かれたのが、江戸川乱歩の「二十面相 地底の魔術王」が置かれていました。我が家にあった二十面相は全てポプラ社のハードカバーで表紙絵は頭が虎の人間と、こっちを見つめてくる少年の絵でした。割とポプラ社のハードカバーは、ミステリ感満載の怖い表紙絵になっているのですが、「地底の魔術王」は特に私にとって怖くて、軽くトラウマになっていました。

 それから10年近く経った数ヶ月前、親とミステリの話をしていた時に「地底の魔術王」が怖くて二十面相はいい印象があまりなかった、と言うと、弟も賛同してきたので多分割と子供心には怖い絵だったんだな、とわかりました。

 

 と言うことがあり、あまりミステリには積極的に手を出していませんでした。ですが、このまえ図書室に行った時に久しぶりにホームズとルパンが目につき、ホームズは家にあるしほとんど読んだから、と言う理由で、アルセーヌ・ルパンの本を借りようと思いました。

 借りたのは一巻の、「怪盗紳士ルパン」です。全巻借りられていなかったので、一巻が一番いいと思い、借りました。読んだことはあるはずですし、読んでいても「この表現覚えてるな」などの気づきがありましたが、初めて読む気持ちで読めました。

 

 この巻にはいっている作品は9つあり、

  • アルセーヌ・ルパンの逮捕
  • 獄中のアルセーヌ・ルパン
  • アルセーヌ・ルパンの脱獄
  • 謎の旅行者
  • 王妃の首飾り
  • ハートの7
  • アンベール夫人の金庫
  • 黒真珠
  • 遅かりしシャーロック・ホームズ

と言う作品がそれぞれ入っています。

 驚くポイントは、一番最初に「アルセーヌ・ルパンの逮捕」から始まると言うところです。ルパンのやったことや、名声が説明されないまま逮捕されてしまうので、全くルパンと言う名前を聞いたことのない人だと「ダメな怪盗」と言うイメージになるかもしれません。

 でも、ルパンは有名すぎるほど有名だし、文中にもルパンの余裕のある様子などが特に「獄中のアルセーヌ・ルパン」で書かれていたので、これからの活躍が期待されました。

 

 作中では、フランスの地名が多用されているので、場所の名前を知って、位置関係をつかんだらもっと面白くなるのかもしれません。予備知識がない状態で読みましたが、話の意味はもちろんわかるものの、どのようなところかを知っていればもっと臨場感を持って読めそうだな、と思いました。

 

 9つある話の中で、一番記憶に残っているのは「王妃の首飾り」と言う話です。

「王妃の首飾り」は、短いお話ですが、ルパンの一番最初の犯行が記されています。若干6歳にして、その場にいる大人たちの目を騙し、超貴重品を盗み出した手際はさすがとしか言えません。

 犯行自体は、その家にあったものを使っていて、期待しすぎると少し拍子抜けするものかもしれません。でもそれを、小学一年生の年齢の子がやると考えると、すでに怪盗紳士の片鱗が示されています。

 

 この「王妃の首飾り」は、実在したもので、マリー・アントワネットなどに関わる首飾りです。「首飾り事件」自体は、色々な本に書いてあるし、「ベルサイユのばら」を好んで読んでいた私にとっては、「あ!あのお話だ!」と一人でテンションが上がるキーワードでした。

 「フランスは、「花の都」と言われるとともに「血の都」と言う言葉がふさわしい… 」という言葉を、「風の城壁(風のカスバ)」と言う漫画で読んだ気がします(間違えてるかも…)。その言葉の通り、フランスはルイ14世やルイ16世、ナポレオンなど、本当に色々な偉人を輩出した国です。その国で、怪盗が踊ると言うところにロマン(?)のようなものを感じます。

 また、フランスといった国で歴史に絡んだ事件が起こると、場所も相まってとても輝いた作品になる気がします。これは、日本で西洋絵画の事件が起こるのとは違った魅力があるな、と思いました。

 

 ですが、この物語で着目するべきは。盗品でも、盗む技術でもなく、人間関係だと思いました。ルパンは子供の頃ラウールという名前で、母親とともに伯爵夫人のお手伝いとして伯爵家に住み込んでいました。読んでいると、ルパンの母親は伯爵夫人の友人らしいのにみすぼらしい部屋に住まわせて、召使として使っていて、二人は相当関係が悪い、さらにいうと伯爵夫人が何らかの支援を抱いているように感じられます。

 少年ラウールが首飾りを盗んだ後、首飾りの持ち主であった伯爵夫人はラウールの母親が犯人だと決めつけ、ついには伯爵家から追い出してしまいました。

 

 もともとルパンにとって、伯爵夫人は自分の母親を見下していた人、さらには証拠もないのに無実の母親を追い出した人。首飾りを盗んだのはルパン自身ですが、それほどの恨みがあったことが推測されます。しかも、それだけでは治らず、ルパンは大きくなってからフロリアニ騎士として伯爵と伯爵夫人に近づき、当時の犯行の種明かしをします。今まで仲良くしていたはずの人が、実はラウールで、しかも首飾りを盗んだ重宝人だった。これを知った時に伯爵たちは何を思ったのでしょう… 並々ならぬ恨みが感じられたと思います。

 

 そしてルパンが種明かしをしてもなお、「母親が共犯」と言い張る夫人に対し、だんだんと語尾が強くなるルパンの言葉は、読んでいて爽快感を覚えるとともに、恨みがどれだけ強いのかを考えさせます。

 多分、ルパンがもう一度彼らの前に姿を現したのは、「種明かしをすることで、自分の母親の無実を言いたかった」「伯爵夫人たちが首飾りを盗まれたことでどういう人物になったかを見たかった」「6歳の仕業を見抜けなかった大人たちをバカにしたかった」という三つの理由があったと思います。

 読んでいても、伯爵夫人は嫌な人に見えるし、ルパンは盗みをしたにも関わらず、正しいことをしたように思えました。しかも、その後でルパンは伯爵に言われた通りに、ネックレスの一部を返します。

 ルパンの性悪の良さや、茶目っ気のあるところなどの性格も割と表されていて、読んでいて面白かったです。

 

 ということで、一番読んでいて面白かったのはルパンの初めての盗みを描いた「王妃の首飾り」でした。

 他の短編は、割とルパンの失敗談も載っているので、ルパンの人間を伝えるという意味でとてもいい一作目だったと思います。ルパンがすごい怪盗ということも分かるし、人間性もわかります。一番最後の短編にはホームズも出てきて、コナン・ドイルのホームズが一番だけどこれはこれで面白かったです。でも、地味にルパンの勝ち、といった感じになっているので、はやみねかおる夢水清志郎と怪盗クイーンのように、「勝負のつかない二人」といった設定のオマージュがあったら読みたいなと思いました。

 

 最後までお読みくださりありがとうございました。割と長くなってしまったので、読みにくかったらすみませんでした… 思ったよりもルパンかっこよかったので、ぜひこれからも読んでいきたいです!