こんにちは。この前、SNSで『付き合うならどの文豪と付き合うか』というお題を見かけました。選択肢は、<太宰治、夏目漱石、宮沢賢治、谷崎潤一郎>でした。誰とも付き合いたくないというか、4人ともかなり独特な性格というか…
結果は、夏目漱石になったそうです。留学前の漱石ならまだ一般的なお付き合いができるのかな?「付き合う」のみなら、太宰、谷崎もありそうだけど、ランキングでは下位の二人となっていました。でも、文豪の中から選ばなきゃ行けないのなら、戦後の乱歩な気もします。こういった想像(妄想?)ができるのは、面白いな〜と思いました(笑)
目次
- 本について、著者はこういう方です!
- 文章がとても繊細!日本語話者でよかったと思わせます
- 木が主役になっている本
- 幸田露伴についても;この教育方針、確かにそうなんだけどな…
- 本番の前には絶対事前学習が大事!!
- まとめ:魔法みたいな文章でした
本について、著者はこういう方です!
今回は、またまたブクレポです!この前、『ご冗談でしょう、ファインマンさん』という、エッセイなのか自伝なのかよくわからない本を読みました。
それがすごい面白かったので、母親とこの前図書館に行った時にエッセイを色々教えてもらい、その中から気になったものを借りてきました!お母さん、ありがとう!
面白そうと思って借りた本のうちの一つが、幸田文さんの『木』という本です。
幸田文さんの名前は、家にある「きもの」という本を読んでいたので存じ上げていました。ですが、幸田露伴さんの次女だったとは…
それは、本当に知らなかったです!両方の名前はもちろん知っていましたが、血縁関係だとは思いもよりませんでした。以下は、新潮社の著者紹介からのコピペとなります。
(1904-1990) 東京生れ。幸田露伴次女。1928(昭和3)年、清酒問屋に嫁ぐも、十年後に離婚、娘を連れて晩年の父のもとに帰る。露伴の没後、父を追憶する文章を続けて発表、たちまち注目されるところとなり、1954年の『黒い裾』により読売文学賞を受賞。1956年の『流れる』は新潮社文学賞、日本芸術院賞の両賞を得た。他の作品に『闘』(女流文学賞)、『崩れ』『包む』など
幸田文さんのエッセイの中で、「きもの帖」というものもあり、小さい時に「きもの」をパラパラと読んでいたこともあって、この本にしようかと迷ったのですが短編「藤」を読んで『木』に惹かれたので、こっちの本にしました!
この本も、全15編が収録された短編集のようなものとなっています。それぞれ、記憶に残った木について語っていて、一つの章はだいたい10〜20ページです。
文章がとても繊細!日本語話者でよかったと思わせます
この本を読んで一番最初に思ったこと。
終始、文章が繊細かつ優美というか、
とても綺麗な言葉遣いなんですよね。
文章が書かれたのは1970〜1984なので、晩年の文章(まだ晩年というほどではないのかな?)となっています。
言葉が本当に繊細で、読んでいて「こんな言葉が私には書けるようになるのか?」と思っていました。いつも読んでいる本よりは語彙が豊富で表現が古めかしいところもありましたが、読む分には問題なく順応できました。
ですが、書くのは絶対にできないと思います。すぐに思いつく言葉じゃありません。
その言葉を読んだ時にわかるというのと、
その言葉を自分でひねり出して使うことができるというのは
かなり違います。
この文章を、日本語話者として読むことができるのは嬉しいな、と思いました。
この本が翻訳されたら、もちろん内容は面白いとは思いますが、また違った作品になるんじゃないかな〜と思います。
数十年の歳月の中で培われた感性と、美しい文章が組み合わさって、読んでいて身になる本だったな、と思います。こういった気持ちになったは初めてに近いので、これからも幸田文さんの本を読んでいきたいです。吸収できるものは全部して、自分の中に保存しておきたいです。
木が主役になっている本
内容は、幸田文さんが全国のいたるところにある木々を訪ねたものとなっています。
幸田文さんが言っていることも、すごい勉強になるというか、読んでいて心にすっと入ってくる言葉でした。
動物を主役にする本はたくさんありますが、木々は普通背景として綴られることが多いです。この本では、題名の通り木が主役となっています。
木に生命があるということが本を通して綴られていて、
木々を畏敬の眼差しでみる筆者の気持ちがとても伝わってきました。
木に対する知識や、植物に対する知識が並外れている、というわけではないと自分で言っています。父親である幸田露伴とのやりとりについて「藤」という章で語られているのですが、そこで幸田文がどうやって植物に興味を持ったのかが記されています。
幸田露伴についても;この教育方針、確かにそうなんだけどな…
おなじ章では、露伴の教育方針のようなものも少し見えてきます。
幸田文が自分の娘と植木市に出かけた時、露伴は幸田文に自分のがま口を渡して、孫が好む木や花を買ってやれ、と言いました。
娘が欲しいと言ったのは、藤の老木で、流石にがま口に入っている金では買えない商品でした。そのため、結局娘を説得して参照を買うことになりました。
ここで、露伴が激怒しました。
「市で一番の花を選んだとは、花を見るたしかな目をもっていたからのこと、
なぜその確かな目に応じてやらなかったのか、藤は当然買ってやるべきものだったのに」
ということらしいです。でも藤はバカ値だったから、と弁明しても、真顔で怒られます。
「藤がたかいのバカ値のというが、いったい何を物差しにして、価値を決めているのか、
多少値のはる買い物であったにせよ、その藤を子の心の養いにしてやろうと、なぜ思わないのか、
子育ての最中にいる親が誰しも思うことは、どうしたら子のからだに、心に、いい養いにつけることができるか、とそればかり思うものだ、
金銭を先に云々して、子の心に栄養を考えない考えない処置にはあきれてものもいえない。」
この文章は、まあ、それはそうよね、と確かに納得するものだし、こういった精神はとても大事なんだろうけど、ちょっと幸田文さんもかわいそう…という感じの感想でした。
私の親も、教育に関するお金は大抵惜しまないというか、成長できるであろうことに関しては色々融通を利かせてくれる人たちなので、程度に気をつけなければいけないけど、とてもよくわかるな、と思いました。
本番の前には絶対事前学習が大事!!
他にも、木に対する考え方など心に染み入るような考え方がいくつもありました。ただ、一つのエピソードを話そうとすると、詳しく説明しなきゃ私が受けた印象にはならないと思うんですね。加えて、幸田文さんの書き方だからこそより綺麗に見える、というものが多くあります。だから、エピソードを紹介しようとしてもすごいしにくい…
なので、まとめての感想を書いていきます!
この本を読んでいると木、最初の方は純粋に「屋久島行ってみたいな〜」とか思っていたのですが、
この人は私と比べることすらできないほどに木を敬っていて、
木をみてきているからこそ、
名所の木を見ても感じるものが文章を通してこれほど鮮明に伝わるんだろうな、
と思います。
本の最後の方では、体力もなくなってきて、自分の住んでいる地域の木を見るような話も多くなってきています。そうった、道行にある木の肌をもっとよく見るようにならならいと、しっかり楽しめることはないんだろうな、と思います。
これまでも、白樺の集まった地域など、木が多くある観光地に行ったことはあります。でも、「迫力あるな〜、綺麗だな〜、大きいな〜」など、至極単純な感想しか出てこなかった自分の貧しさを、この本を読んで痛感しました…
かといって、なんでも興味を持てばそれは輝いて見えるものだし、より造詣も深くなります。何でもかんでも影響されすぎるのも、私の癖の一つなので、これもまた程度に気をつけていきたい…
私は、どこかに旅行に行くときは絶対に事前予習をしたい人だし、美術館に行くときは、予備知識がある絵ならその知識を調べてからいきたいです。ルネサンス絵画などはそのいい例だし、小学校の修学旅行の時には小さい時にクリスマスにもらった白紙の本を使って、自分なりに観光のポイントや歴史をまとめた本を作っていました。
それと同じように、何かを存分に楽しむためには、心構えや知識、やりたいことに応じた下準備が大切になります。もちろん、そういったものがない方が楽しめる、という人もたくさんいますし、私も「何も調べない」と決めて何かをすることはあります。
この「木」についても、事前学習と同じように、どこかにいって本に出てきた名木を見る前にしっかり木に対して学ばなきゃな、と思いました。
いつもあるような、突発的ブームで済まされないように、
少しずつ本をまた読み返していって、綺麗な日本語に触れたくなった時、
読んでいる本の質(質って言う言葉が苦手なんですが、同じような言葉がわからないのでこの言葉を使います)に少し不安になった時、
そういったときに読んでいきたいです。
まとめ:魔法みたいな文章でした
ということで、今回は幸田文さんの『木』を読んできました。幸田文さんの本をこれから何冊か読んで、一番好きだったものというか、感傷的になったもの(?)は家にも置きたいな、と思っています。
言葉も、使われている言葉それぞれはすごい難しいというわけでもないし、私が今まで触れてきた言葉でした。
でも、なぜか幸田文さんの手にかかると優美になるんですよね。使われている言葉の幅の広さなのか、特徴のある言葉なのか、イメージが付いている言葉なのか。なぜかはわかりませんが、魔法みたいだな〜と思いました。
ちょっと大げさかもしれませんが、何かに影響されやすい私の読後2時間足らずの感想として受け取っていただけると嬉しいです!
最後までお読みくださりありがとうございました。また、いい本に出会えて嬉しいです!読むごとに読書が好きになっていくというか、当たり前のことになっていく今日この頃です!