うぐいすの音

17歳の女子が運営しているブログ。本のレビューなどしていきます。

伊藤ひとみさんの『キラキラネームの大研究』を読みました!

 こんにちは。この頃は遠方に住む友達とも色々とやりとりができていて、とても嬉しいです!海外に住んでいる友達がいると、ちょっとしたやり取りでも新しい発見があったりするので、楽しい!

ちなみに、昨日は祖母から「これ解けなかった」と言われて数独を見せてもらったのですが、これが本当に難しくて…。私も自分では中級くらいの数独なら解ける気でいたのですが、途中まで行ってそこから全然解けなくなってしまいました。自分で書いた文字よりも電子機器で入力した文字の方が慣れているというかやりやすいので、今日はこの後フリータイムにでもパソコンでその数独を入力して、考えようと思っています。

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目次

 

本について!本の構成など

今日は、また本を読んだ感想を書いていこうと思います。

今回読んだ本は、伊藤ひとみさんの『キラキラネームの大研究』です。

新潮新書出版の本で、2015年発刊。著者の伊藤ひとみさんは、1957年生まれの方で、編集者を経て文筆家となりました。

 

 

本書は、8つの章から成り立ち、キラキラネームと近代の珍名などから、そもそも名前とは、日本語とは、など、想像もしていなかった視点から考察されていました。

 

どこからがキラキラネーム?ちょっと認識のズレが…

 キラキラネームというと、漢字が大げさというか豪華で、その上普通には読めない、という読み方のイメージだと思います。キラキラネームとして有名な「光宙(ぴかちゅう)」さんとか、そういうイメージがありました。もしくは、いわゆる暴走万葉仮名を用いた命名夜露死苦など)なども、キラキラネームとして私は考えるかな〜と思っています。

 

 だけど、本を読んでみると、「え、これめっちゃ普通の名前じゃない?」だったり、「いや、この名前とか知り合いに何人かいるんだけど」だったり、そういった名前の方が多かったです。

例えば、心愛(ここあ)さんや希空(のあ)さん、大翔(ひろと)さん。

「ゆい」と呼ぶ名前のみでも、名前辞典をのぞいてみたら70名近い名前がリストアップされているのだとか。結衣、夕唯、友彩、侑生、結心、友結、夢衣、夢苺、優生…

 こういった名前、私にはあまり違和感がありません。だけど、私たちの親世代よりもちょっと上の世代となると、「キラキラネーム」と思うのかな、と感じました。

 

 私の名前は、古典にも出てきている、ちゃんと辞典にも載っているような言葉ですし、弟の名前もちゃんと読める読みです。だから、名前には全く不満がありません。

それでも、友達や同級生の名前を改めて考えてみると、

普通に読むとそうはいかないかもな、という名前だったり、

一文字省略して読んでいる読み方だったり、

いわゆる「無理読み」と言われるような名前も多かったです。

 

 こうやって、

昔は「常識から外れてる」などと言われていたキラキラネームが、

もう常識になってきていて、

逆に古くから使われている名前が古風といわれ使われなくなっている。

そういう現状があるのだとか。

 

キラキラネームの利用を「”バカ親”の暴走」と片付けるのではなく、そもそもどこからが常識的な命名で、いつからキラキラになったのか、そういったところを考察しています。

 

キラキラネームはこうして作られる!例を一つ

 日本語の漢字と仮名は、懐がとても深いため、置き字や当て字、外国語読みや熟字訓、さらにはそれをつなぎ合わせたり一部切り取ったりと、バリエーションは無限と言っていほどになります。

「心愛(ここあ)」も、心(こころ)から「ろ」を切り取り、愛(あい)から「い」を切り取ったら「ここあ」となります。

 

 それでは、なぜ近年「キラキラネーム」が一般化されてきているのか。なぜ昔ではいけなかったのか。その原因として、筆者は漢字の一般化と常用漢字表の改定をあげています。

 

常用漢字表の出現で、漢字の意味が変わった⁈

 今までは、文字の意味などに注目して名付けする方が多かったですが、今は「おと」に注目して、語呂などで名付けする方も多数派となってきています。

そう言った変化は、1946年に5万字以上あった漢字を1850字に減らした「当用漢字表」を発表してから始まったと言われています。

古くて難しい漢字などは、その感じがもともと持っている意味や由来を、割と無視して作った簡単な漢字となりました。

例えば、「戀」

これは、上部の糸の間に「言」が挟まって、言葉が糸に絡まってなかなか出てこない様子を表しています。それに下部の「心」が合わさって、「さまざまに思い乱れて思い切りがつかない、もどかしい心」という意味になるのが本来の語源です。

それが、当用漢字表により「恋」になります。

恋の上部の「亦」は、同じ物事がもう一つあるという意味。

 

つまり、「千々に乱れる切ない心」が「二股をかける心」とすり替わってしまったのです。

 

さらに、1980年に当用漢字表が今でもよく知られる常用漢字表となったため、1980年以降の世代は常用漢字しか知らず、漢字の由来などを昔よりは感じなくなった世代だそうです。

 そうして、漢字の持つ意味や由来などに着目せず、音を優先する考え方が出てきました。

本によると、「僾」という字を、名付けをする親が要望する人名漢字第24位に入っているそうです。「僾」という字は「アイ、ほの(か)、かな(しい)」という風に読まれ、「ぼんやりしている」などとあまり良い意味では使われていません。

考え方や、漢字に対する感じ方の変化などが、こう言った状況を生み出しているのではないでしょうか。

 

 

漢字の持つ意味が変わりました

 そして、大前提として漢字の認識が昔とは変わったこと

表意文字としての漢字が表しているのは、中国語の文字としての漢字が有していた字義でもあります。

わかりやすい例として、

「国語辞典」は日本語で使われている言葉を五十音順に並べ、日本語の語句から漢字を捉えているのに対して、

漢和辞典」の方は、中国の字書である『康熙字典』に準じて部首別に漢字を配列して、用例も漢文から取っています。

 

こう言った例からもわかるように、そもそも漢字とはごく一部の階層に属する人たちが使うものでした。

平安時代まで時代を遡らせると、漢字は特権階級の中でも一部の男性が使うだけです。

 そのあと文字が色々なところで教えられるようになったとはいえ、難しい漢字を使って名付けするのは教育を施されたエリート階層が中心。

大正から昭和にかけては、多くの名前がカタカナだったことからもそれが伺えます。

 森鴎外の息子、於菟(おと)さんは、ドイツ人風の響きである「オットー」に注目しがちですが、実はこの於菟という漢字はしっかりと中国の古典に由来しているものなのです。

 

 ということは、昔も難読の名前はあったけど、それらは意味も考えられていて、しかも大多数にはなり得なかったのです。

今は、漢字の持つ意味が薄れてきていて、さらにほとんどの人が漢字と親しく、昔の重厚な漢字遣いに比べると、音の響きや国語辞典で出てくる漢字の意味を使った名付けは、着眼点が全然違うんだな、と思わざるを得ません。

 

 

 本の最後の方には、こう書かれています。

とすれば、一時一時に語源に基づく意味が込められている漢字の憑依性は失われているのは自明だ。

漢字本来の規範と伝統との繋がりから隔絶した世代には、「漢字」はもはや、イメージやフィーリングで捉える「漢字」になっているのかもしれない。 

 

一個言いたいこと:批判はしたくありません

 この本を読んで、もちろん色々驚いたことはありました。

キラキラネーム自体にも驚きはありました。例えば、紗冬で「しゅがあ」さん。これは、紗(さ)冬(とう)で、「紗冬→さとう→シュガー→しゅがあ」という変化ではないか、と書かれています。

 他にも、「あ、なるほど!」となるような名前が多くありました。

 

 本の中では、色々な名前が「キラキラネーム」として取り上げられていますが、一個注意しておきたいことが。

 このブログでは、

本の感想を書きたいのであって、キラキラネームを批判したいわけでは全くありません。

私は名付けをしたことも全くないので、キラキラネームに対してどうこうネット上で言える見識もなければ、そこまで深く考えたこともありません。

 さらには、私の友達の名前もキラキラネームとして乗っていたため、それを批判されると私も少し嫌な気持ちになります。

なので、どんな名前をつけようとそれはその親御さんの意思で自由だとは思います。

ただ、自分の名前がどうしても嫌な子供さんなどもいるだろうから、そう言っている人に対する救済手段は必要だとは思っています。

 

 

昔からある難読名。本居宣長も困っていた…

 そして、キラキラネームと言っても、「昔もいっぱいいるじゃん!」とすごい思っていました。よく言われるのが、先ほども於菟さんの例を挙げた、森鴎外命名。他にも、織田信長命名などはよくキラキラネームと言われています。幼名が奇妙丸だったり茶筅丸だったり…

 さらには、私はこの頃歴史の勉強として歴代天皇の和風諡名をまとめています。途中から、和風諡名がなくなってきてはいますが、初期の天皇の諡とか、もう何も読めません。加えて、神様の名前などを見てみると、それも全く読めません…

 

 なんというか、昔の人の名前って全く読めないな…と思っていました。でも、

昔の名前の方が主に意味が重厚であるということ

漢字の持つ意味が今とは変わっていたこと。

そして、当時は「言霊」が名前に込められていると信じていて、名前の持つ意味がとても重要だったこと。

 そう言ったことを踏まえると、納得できたことも多かったです。

 

「似て非なる、キラキラネームと難読名」という見出しがありましたが本当にその通りだと思います。

そして、昔の人、兼好法師本居宣長まで難読名には悩んだ、ということを見ると、勉強になりました。本居宣長の門下生には、「稽古」さんという方がいましたが、その人の名前は「とほふる」さんです。その他にも色々と、難読と言われるような名前がありました。

 当時はもはや解読不能とまで思われていた古事記を研究し、古事記伝44巻を執筆した本居宣長でさえもを

「最近の名前はことに奇妙な字、変な読み方をして、非常に読みづらい名前を多く見かける。すべての名前は、いかにも読みやすい文字でよく知られているものが良い。」

と言わしめる難読名…

本当にすごいな、と思いました。

 

 

まとめ:ぜひ読んでみてください!

他にも、色々と面白い記述がたくさんありました。ぜひ、読んでみてください!キラキラネームについて知るにはとてもいい本だと思います。ただ、筆者の方はキラキラネームの現状を批判している立場だと思いますが、私はそこまで知識がないので、簡単に批判派にはなりたくないな、と思いました。親が子供につける名前にはそれなりの意味や思いがこもっていると、少なくとも今は思っていたいです。

 

それに、新書が読めた!この頃、興味のある分野のものでも親書を手に取ることが多くなっているので、読む幅が広がってきているのかな〜と嬉しいです。

 最後までお読みくださりありがとうございました。「え、知らんかった!」と思うことがあったら、ぜひ本書を読んでみてください!