うぐいすの音

15歳の女子が運営しているブログ。本のレビューなどしていきます。

住野よるさん『よるのばけもの』読了!謎の多い話でした。

 こんにちは。この前、親と図書館に行きました。一人で本を選んでいると、どうしても読む本の幅が狭くなります。それにこの頃は気をつけて、ジャンルを増やそうとしているわけですが、やっぱりここは私の何倍も本を読んでいる親の意見を聞いて、面白い本に触れよう!というわけで、本を選んでもらいました。

 今日も、そこで借りた本を一冊読み終わったんですが、面白いよと言われて借りた本の中に、陳舜臣さんの『小説十八史略』という本があります。この本、親指の長さ以上に分厚い上に文章が1ページに2段で書かれているので、サピエンス全史と匹敵する(もしくはそれ以上)読み応えだと思います。無意識に後回しにしていたのですが、そろそろこれを読むことも視野に入れなければ…。

 

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amazon.co.jpより)

 今日は、本を読んだ感想をまた書いていこうと思います。

読んだのは、住野よるさんの『よるのばけもの』です。

今まで住野よるさんはあまり手を出してこなかったのですが、この頃読む機会があり、『か「」く「」し「」ご「」と「』と一緒に借りてきました!

 

 

目次

 

 

よるのばけもの;作品紹介、あらすじ

 『よるのばけもの』は、住野よるさんの『君の膵臓をたべたい』『かくしごと』に続く3作目の作品らしく、それまでのキラキラとした青春を描く作品とはまた一味違ったものとなっています。

 

 (私が読んだのはこれとは違う表紙 -単行本で、上に貼ってあります。そちらの表紙の方が私は好みです。)

 

 舞台は中学校で、主人公は安達、「あっちー」です。

彼は、夜になると体がばけものに変わってしまう特殊な能力(?)を持っています。

別に彼が望んだわけでもなく、理由もわかりません。

自分でもいつなるのか、どうしてなるのかわかっていませんが、本人は化け物の姿で海に行ったり、夜の時間を過ごすことを楽しんでいました。

ちなみに姿は、目が8個、足が6本、尻尾は4本の、全身が黒の粒子のようなもので成り立つものです。

 

 ある日、彼は宿題を学校に忘れてしまい、深夜に化け物の姿を利用して学校に忍び込みます。警備員さんしかいないはずの教室であったのは、同級生の「矢野さつき」さんでした。

 彼女は、言葉を変なところで区切り、クラスからは避けられていじめられているような存在です。

話をきけば、警備員さんたちも矢野の存在は認知した上で放っておいているのだとか。昼の時間はみんなにいじめられているからこそ、「夜休み」の1時間だけ彼女は学校にいることができます。

 

 正体を知られてしまった安達は、バラされたらまずいと

「明日、もうちょっと早くここに来、てよ」

のセリフに頷き、予想もしていなかったいじめられっ子との会合がここから始まります。

 

 

なんでいじめが起こった?矢野と安達の関係、考えなければいけないこと

 

 この作品は、読んでいてとても面白いですが、テーマが「いじめ」なだけあってやっぱり重い話になっています。今までの作品で感じた「青春」要素は少なく、始終単調な形で文章が綴られています。本はずっと安達目線で書かれています。

 

 そして、この本は

いじめがテーマにしては、そこのみには集中できないと思わせるほど伏線が多いです。

全て安達目線のため、安達がわからないことは私たちにもわからないし、これって伏線だよね?って思っても自分たちでそれを解いていくしかありません。

 

 いじめのきっかけは、

矢野が、クラスではおとなしいキャラの緑川双葉が読んでいた本を突然投げ捨て、雨に降る中庭に落とした

ということ。緑川双葉は大事な本を汚されて泣き、そこからずっと図書館の本を読むようになりました。

 クラス中が矢野を責めるようになったのは、泣く緑川とは対象的に矢野が『にんまりと笑っていた』ことがきっかけでもあります。(これについては作中で理由もふくめ言及されています。)

 

 その矢野に対する卑劣ないじめを、安達は黙認していました。

「あんなおかしいことをするんだからしょうがない、うまくやればいじめられることなんてないのに、」

そう思い、頭のおかしな奴として認識し、自分も排除されないために必要があればいじめに加担し、否定はしません。

 

 でも、夜に話すようになると矢野の好きなアーティストを好きだったり、テレビ番組を楽しみにしていたり。

いつもにんまりと笑っている「おかしな奴」で矢野はあるべきなのに、

そう思えなくなってきています。

 最後は安達が考えを改めます。一概にハッピーエンド、バッドエンド、と言える作品ではないですが、希望は見えます。

 

 考えなければいけないことは、この本の中でいくつかあります。そのうちの4つを書いていきます。


他にも矢野の言葉から気になる女子の正体などありますが、とりあえずは4つ。ネタバレにもなりますので、読む方は自衛しながらでお願いします。

 

 

1. ばけものの正体は?

 まずは、ばけものの正体から。

これは、想像するしかありませんが一番ありきたりというか、考えやすいのは

安達が周りに合わせて行動する中でストレスを抱え、

そのストレスがばけものとして姿を現した

という解釈。

 

自分がどうありたいか、どうあるべきか、

そういったものよりも、集団の同調圧力に負けて行動している人の、

無意識の反発としてああいった自然の摂理に反する「ばけもの」ができた、

という解釈も考えられます。

 

 もしくは(似ているかもしれませんが)、

自分の本当にやりたいことや考えたいこと、

そういったことを全部封じ込めて昼の時間を過ごしているから、

押さえつけられた感情が増大してばけものの姿を取ったのかも。

 

 安達は、次第に昼の自分も「ばけもの」と形容していきます。それに、出会った時から矢野は「昼が嘘の姿で、今が本当の姿?」と聞き続けます

 ここから考えると、

安達の夜の姿が本当の自分で、

ラストに昼の時間にも関わらずああいう行動をとったことで、昼の姿でも表を出した

となります。

自分の意識としている行動とのギャップがなくなるとばけものは無くなるのかもしれません。

 

 矢野さんが最後にいう、

『やっと、会え、たね』

は、印象にとても残っています。

ばけものの姿ではなく、昼なのに本当の姿を見せてくれたことに対する言葉なんでしょうが、

矢野さんってどこからどこまで、何を知っているんだろう…と少し怖くなりました。

周りから見たときの行動は奇抜かもしれませんが、周りをよく見ているし(後述します)、洞察力も半端ない

 

 矢野さんの洞察力もすごいですが、私は「笠井」くんがばけものより、矢野さんより、一番怖かったです。

 

 

 

2. 矢野と緑川から見た「笠井」の存在

 

「頭がよ、くて自分がどうす、れば周りがどう動、くかわかって遊んでる男、の子?」

 

「彼は本、当にうまいよ、ね」

「きっと彼に、は好き、な人なんて一生出来、ないって思う」

 

 

これは矢野さんのセリフ。状況と、出てくる登場人物の幅からしてほぼ間違いなく笠井くんです。

 

「笠井くんは悪い子だよ」

 

これは同じクラスの緑川双葉さんのセリフ。緑川さんは、何も実害を負っていないはずなのに、よく思っていません。

 

 実害を負うどころか、緑川さんは笠井くんに好かれている…という認識が広まっています。

 

 一人だけ、個人への「うん」をもらった笠井は、俺たちに見られたくなんてないんだろうけど、先ほどまでよりもにやついていた。俺たちに向けるのとは違う種類の笑顔を浮かべていた。バレバレだ。皆に。

 笠井は、紛れもなくこのクラスの中心人物だ。この、矢野に対する敵意で一丸となっているクラスの真ん中に、笠井はいる。

 なのに、実のところ、笠井が矢野に何かをするということは全くない。

 笠井と矢野の関係、それは、笠井がこのクラスの中で一番、矢野に対して怒っている、というただそれだけだ。

 ただそれだけのことを誰しもが知っているというのが、矢野にとっては悲劇だった。

 仲間意識。

 

 

 これは安達目線の出来事ですが、笠井くんは緑川さんが好きなのでしょうか。文章だけ見ればそうなります。

 

 ただ、幾らかの読了した人が考えていることかもしれませんが、

私は笠井くんがこの話の中で一番こわいと思いました。

 

 まず、安達は笠井から挨拶がわりに

 

下駄箱でわりと重いパンチを食らった。

 

とあります。これで安達が何も言わないということは、自分は笠井に比べてモブの存在であると自覚しているからでしょう。

「中心的存在」とあり、安達から見た笠井は人気者で好青年みたいですが、だからこそ笠井に対する劣等感とか気づいてないのかもだけどすごいありそうです。

 

 そして、

ごくたまにだけど笠井は俺がいじると、急に不機嫌な顔になることがある。

 

「ごくたま」「急に」という言葉から、いつそれがくるのかがわからないことが読み取れます。

突然不機嫌になる相手がいて、

しかもそれが自分が「仲良くさせてもらっている」ような相手だったら、

いつもビクビクしながらの発言になるでしょう。

 

 でも、「ごくたま」だからこそいつもは愛想のいい、ノリのいい好青年です。だからこそ、不機嫌な印象は強く残りません。

 

 また、矢野をかばうような発言をすることで「好青年」のイメージも強く残りますね。

…これは考えすぎなのかもしれませんが。安達目線で、この一件(本を読んでみてください!)では笠井の評価が少し変わったというか、かなりの衝撃があったらしいのでそこまで見越していたならすごいです。

 

 一番笠井を怖いと思ったのは、

怪物である安達に何回も「怪物」の存在を話題として話していること。

多くないか?と思って見返すと、安達がいるところで怪獣を話題に出すのが7回でした。笠井以外のとの安達の会話を見ると、話題をつなぐために苦し紛れに怪獣の話題を安達から出したのが2回。それだけです。

 安達と笠井の会話が多いというのもあるかもしれませんが、読んでいて「笠井くん怪獣にめっちゃ興味持ってるの?」と思っていました。

笠井と他のクラスメイトの会話を知らないので比較はできませんが、

もしもこの怪物の存在を笠井が気づいていたら、

もしくは感づいていたら、

何回も会話に出すことで安達が怪物である、と確信していたのかもしれません。

 

 その後も、安達から「そういえばこの前言っていた怪獣…」と話題に出すことがあったし、普通なら「怪獣なんていないだろ」で終わりの話題のはずが…と色々考えていたら、笠井くんが怖くなってしまいました。

 

 流石にここまで気づいているとは考えにくいかもしれませんが、冒頭に書いた緑川さんと矢野さんのセリフ。ここを見ると、そう取ることもできなくはありません。

 

 さらに、矢野さんの「好きな子なんて一生出来ない」という言葉を鵜呑みにすると、笠井くんは緑川さんを好きではないのかも。

例えば、恋愛的に好きではないけど、おもちゃとして目を向けていたとしたら。自分が中心人物として君臨し、楽しめるようにコマとして利用したのかもしれません。

緑川を好き(な設定)でいれば、

矢野に対するいじめもひどくなることを自覚した上で行動し、

矢野に対するいじめを考えた→自分は楽しめる

という風に考えれば、緑川と矢野の言葉に納得も行きます。

 

 

 

3. 緑川双葉の立ち位置は

 そして、緑川双葉について。

彼女は、何を言われても「うん」しか言わない内気で大人しい女の子、として書かれています。本が好きで、いつも読書をしています。

 彼女にたいしての矢野の言葉が、

「喧嘩しちゃっ、た元友達が、ひどいことされてて仲直りも出来な、くて、誰に対しても頷くだけしか出来、ない癖に責任を勝手に感、じて本人の代わりに仕返、しをして、るバカなクラスメイ、ト?」

でした。

 

 実は、矢野に危害を加えたクラスメイト数人に、色々と犯人のわからない嫌がらせのような事件がありました。上靴を中庭に捨てたり、窓を割ったり…

 それらの犯人は、緑川さんなんでしょうね。このセリフから見るとそうとしかいえません。

 緑川さんと矢野さんは、みんなには見えないところで仲が良く、些細なことから喧嘩して、怒った矢野さんが本を投げ捨てたのかも。

 それで泣いたから、みんなが元友達をいじめていて、自分は何も出来ない。

だからこそ、矢野さんをいじめた人たちに代わりに復讐をしていたのかもしれません。

 それは、他の部分からも読み取ることができました。

 

それに、矢野さんの考えがあっていたら、より

「笠井くんは悪い子だよ」

の意味も真に迫るというか、笠井くんについて感じた突拍子もない怖さは正しかったんじゃないか、と思えてきます。

 彼女は、矢野さんを傷つけた安達に対してこれから何らかの制裁を加えるのでしょうか。

それとも、矢野さんの味方である、仲間になったことで許すのでしょうか。

 

 

4. 学校側の対応の仕方

 最後に、学校の対応について。

 

よくわからない学校だな…と感じます。

警備員さんも、矢野さんと仲のいい能登先生(養護教諭)も、

「夜休み」については多分知っていたんでしょう。

安達と能登先生の会話からも、能登先生がクラスのいじめに気づいている可能性はとても高いと思います。

 

 蛍光灯も野球部の窓も、大きな事件になっていて良さそうなのに騒ぎにはなりませんでした。

学校側で、矢野さんたちに対して配慮(?)している人がいるのかもしれません。

 

 私は、いじめを見過ごしてただ1時間夜に学校を解放するだけなのは対応として正解なのか微妙だと思います。本人が望んでいるならその限りではありませんが。

それに、警備員さんも矢野さん以外の生徒が数名学校に入り込んで、安達(化け物)と対峙して騒いでいるのに駆けつけません。

 警備員さんが外的要因で動けなかったのか、自分から動かなかったのか…よくわかりませんが、学校自体におかしな仕組みなどがあっても不思議ではないな、と思いました。

 

 また、安達くんが保健室に行った時、緑川さんもその場にいました。

能登先生は、緑川さんとも仲が良く、緑川さんから聞いた話を矢野さんにしているとしたら、矢野さんが緑川さんのしている事について気づいている理由ともなるかもしれません。

 ただ、本当にこんなことをしていたらプライバシー的に色々ありそうなので、緑川さんの行動については、単純に矢野さんが気づいただけなのかも。

少なくとも、能登先生はかなり矢野さんと緑川さんと親しく、状況がわかっている先生だったと思います。

 

 蛍光灯や窓について、学校側で働きかけをしている人がいたとしたら、

それは矢野さんたちから騒ぎを大きくしたくない、と頼まれた能登先生か、

能登先生に状況を教えてもらったのにそれを公にしたくない上層部か、だと思います。

前者であってほしいですし、矢野さんは自分から他人に向けたいじめを引き取るような行動(ここについても、私は少し考える余地があると思っていますが)をとっているので、そうやって徹底的に自分だけで処理していくというか、向き合っていく態度をとっていても不思議ではありません

 

 

 

まとめ;伏線の多い作品でした!もし、自分が安達くんだったら

 

 ということで、住野よるさんの『よるのばけもの』について感想を書いてきました!

これ以外にも、色々と気になる伏線はありました。

本当に伏線が多くて、何回も読まないとスッキリしないと思います。私は数回見返しましたが、まだスッキリしていないところもいくらかあります(笑)。

 

 この本のテーマはいじめですが、かなりひどいいじめだと思います。

言葉だけでの攻撃なら、ある程度の学校にあるのかもしれません。

でも、物でも攻撃してくるということは、証拠を残してもこのクラスならバレない、と思っていることにつながるので、程度の軽いものでは全くなさそうです。

 

 自分が同じようなシチュエーションになったらどうするのか。

少なくとも、今の年齢だったら親に言うと思います。自分一人で対抗しようとしたら絶対に矛先が回ってくるし、自分のことじゃないんだから気を使い過ぎても何も始まらない。

だったら、もう大人に任せるのが一番なはず。だけど、学校が協力しない場合もあるので、仲良い先生を作って、その先生に相談するのもアリかもしれません。クラスに注意しなくても、例えば保健室登校のような形にするとか…。でもまずは、その子にコンタクトをとるかな。

 

 色々対応策は考えられますが、実際に自分がその通りに動けるかは自信がありません。

綺麗事を言っていても、一度傍観者になった人間がそこから立場を変えるのはとても難しいはずです。

 安達は、その難しいことを克服しました。絶対に明るくなるお話…ではないと思うけど、この後も安達みたいな行動を起こす人がいる可能性は十分にあります。

井口さん、緑川さん、そして安達くん。この3人がまずは繋がれたら、状況は変わるのかもしれません。笠井くんがどういう行動をとるのかも見てみたいです。

 

 最後までお読みくださりありがとうございました。かなり重い作品でしたが、謎解きも多く集中して読むことができました。もう一回読んで、また伏線を解いていきたいです!