うぐいすの音

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初野晴さん『水の時計』読了:感想、異色な作品…

 こんにちは。今日は月曜日ですね。また一週間始まります。色々なことに変化が出てきて、しかももうギャップタームの終わりまで1ヶ月半もないです。本当に頑張っていきたいです!

 

 

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目次

 

 

本のあらすじ、著者紹介

 

今回は、読了本の感想を書いていきます。

取り上げる本は初野晴さんの『水の時計』です。

 

 

この『水の時計』は、第22回の横溝正史ミステリ大賞受賞作です。

同時に、初野晴さんのデビュー作ともなっています。

 

 初野晴さんの本は、少し前に1冊読んで読書レポートを書いています。こちらの作品は、謎解き要素も多く、タイムトラベルと魔女狩りという重い要素が結びついて、読んでいてとても面白かったです。

 

chirpspring.hatenablog.com

 

 こちらの作品はミステリ大賞を受賞していますが、読んでいてあまりミステリ要素は強くない気がしました。でも、少し不思議な形の話+重い話題(社会性のあるもの)という感じがこの人らしいというか、強みなのかなと思いました。まだ二作しか読んでいないので、他のシリーズ等も読んでいきたいです!

 

 あらすじを書いていきます。

主人公は、暴走族の幹部をやっていた高村昴

下手を打って傷害事件を明るみにしてしまい、周りの仲間が全員逮捕されている中、老執事のような男に仕事をもらい、警察にも融通を利かせてもらうようになります。その仕事の報酬は一千万円。

 その一千万円の代わりに、脳死状態の少女・葉月の臓器を必要とする人に運ぶ仕事を依頼されました。

葉月は、不可思議なことに月光の当たる時にのみ言葉を発することができるのです。

人工呼吸器に、声帯の変化を拾える意思伝達装置をつけ、会話を可能としてるのです。

でも、実際に脳死判定基準をクリアしていて、脳が死んでいる状態なのに変わりはありません。その本人が臓器提供を希望していて、法的にドナーになれないこと以外には、医師もいて問題もありません。

 公にできないため、最短距離で最短時間で臓器を届けられるのは、暴走族として今まで警察の目をかいくぐっていた昴のみでした。

 

 

本の感想:初読で思ったこと

 

 本の下敷きになっているのは、有名な童話、オスカー・ワイルドの『幸福の王子』です。

体の一部分を分け与えるのは葉月で、その体を運ぶツバメは昴。

臓器提供という話題を通じて、自己犠牲の精神とそれだけには止まらない青少年の苦悩というか、復讐の精神を描いているようにも思えました。

 

 短編小説のような形で、それぞれの話の中で臓器提供が一個ずつ成し遂げられていきます。時には臓器を断る人もいますし、

何より世知辛いというか世間の現実がまざまざと書かれているため、重くつらい感覚がずっとのしかかっているような感じです。

 

 それでも、話が詰まることはなく、水のようにさらさらと内容が流れていくというか、時間の進みはしっかりとは書かれていなくても、物語の中の時間が流れているのを実感できるようなスピードで読めました。

(うまく書けない…。)

 

タイトルが『水の時計』なのにも意味があります。脳死状態の場合、普通その人の時計は止まります。葉月の場合のみ、月の出る時にだけ止まった時計が動き出すことから、葉月が持っているのは「水の時計」と言われています。

その「水」に対応するかのように、物語がさらさらととめどなく流れて、でもその中に希望に向かって動いている葉月と昴がいる。そんな感覚でした。

 話を読み進めていく中で、葉月と昴の関係性もなんとなくわかっていきます。

そして、「非行少年」を気にかける刑事の存在感も増していくし、色々な要素が複雑に絡み合っている本でした。

 

 

脳死と臓器提供について考えるきっかけを

 

 一番印象に残ったのは、昴の元先生の対応です。

心臓が弱い先生で、受験生の担任を受け持った時は「なぜ障害者が担任に」と非難轟々でした。でも、そのクラスにいた昴は特に気にしない様子でとどまっていた。だから、印象に残っている生徒でした。

 

 その昴が突然現れて、心臓移植が最後の可能性だという診断をもらった先生に対し「心臓移植をしてくれないか」と話を持ちかけます。

びっくりして話を保留している間に、警官が来て、元教え子のはずの高村昴を知らないか、と聞かれる。そこで、昴が傷害事件の容疑者になっていることも知り、昴を自分で探すようになりました。

 その間に、先生の家庭にも色々起こって、最終的に先生は心臓移植をしないことにします。昴の「先生で最後なんだ」という言葉は聞き逃したまま。

 

 これを聞き逃していなかったら、違法の臓器移植は明るみに出ていたのでしょうか…。

 

 葉月は、「与える自由と与えない自由」を守ってもらっている上で、臓器移植される側の「もらう自由ともらわない自由」も尊重し、その見極めを同年代の昴にお願いしていました。

 臓器提供というなかなかにヘビーな話題ですが、この4つの自由は絶対に守られるべきものだと思います。

 

全ての人が臓器をもらって幸せになりました、後には抜け殻になった幸福の王子様が残りました。

そんなあらすじよりは、

色々な意見が出るであろう本書の方が好きですし、臓器提供に対して懐疑的な意見の人が出てきて安心しました。

 

私は、まだ臓器提供に関しての造詣が全くないため、自分がどう思うかは書けません。でも色々な本を読んでそこらへんのことも学んでいきたいですし、そのためには様々な意見に触れることも必要です。少し前にもこういった臓器提供が出てくる本を読みましたが、徐々に考える機会を増やしていけたらな、と思います。

 

 

最後に:異色な作品

 なんというか、感想をまとめるのが難しい作品でした。

テーマはすごく面白いし、かなり異色な作品だと思います。こうくるか、といった感じもあります。ただ、伏線が色々あったと思うのですが、1回読むだけだと所々置いてけぼりにされるというかよくわからなくなりました、2回、3回と読んでいけばしっかりわかるはずです。

 ミステリーというよりはファンタジーのような、そういった感覚です。『幸福の王子』を読み直したくなりました!

合う人と合わない人にかなり差が出てくるかな、と思います。

 

 これもなかなか思いテーマで、私としては以前読んだ『トワイライト・ミュージアム』の方が好みでしたが、それでも読んで良かったです。この本は、色々な人の感想を聞いてみたいですね。

ぜひ読んでみてください!

 

 最後までお読みくださりありがとうございました。今まで読んだことのなかった形の本でした。ハルチカシリーズというシリーズも書いているらしく、それは周りの友達も何人か読んでいたので、その作品に挑戦してみたいです!