うぐいすの音

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城山三郎『官僚たちの夏』読了!したくはないけど憧れる、今はできない働き方

 こんにちは。今日は海の日ですね!長野県には海の日がないのですが、休日は嬉しいので何も問題はないです!ただ、奈良県は確か県の条例で川の日としていたので、それもまた面白いなと思いました。

 

 今回は、本の感想を書いていきますが、この頃書いてきた太宰治作品ではありません。今回書いていくのは、城山三郎さんの『官僚たちの夏』です!私は知らなかったのですが、ドラマにもなっているようです。

 

 

 

目次

 

 

本に触れたきっかけ

 この話に触れたきっかけを、一応書いておきます。

始まりは、母親から白洲正子さんの『風花抄』という本を勧められたことでした。

そして、白洲正子さんが白洲次郎さんという政治家の方と夫婦ということも同時に教えてもらいました。

そこで、白洲次郎さんについてネットで調べているうちに当時の政治家についてのWikipediaをどんどん探していくと、たどり着いたのが宮澤喜一さんという方です。

 

宮澤喜一さんとは、20世紀後半などにかけて働いた政治家です。

内閣総理大臣や、そのほかの大臣職も色々と務めていました。

Wikiさんによると、放言癖がかなり強かったものの、独学で英語を学び通訳に訂正を入れたり急の記者会見でも落ち着いて英語で説明したりと、「英語屋」と言われるほどに長年勉強を怠りませんでした。

また、戦後日本の進路を決める重要な決定場面にいずれも池田側近などとして立ち会ったため、「戦後日本の生き字引」と言われたようです。

ja.wikipedia.org

 

 この宮澤喜一さんに興味を持ち、色々と調べていった結果、この宮澤喜一さんやその他多くの政治家さんをモデルにした小説、『官僚たちの夏』という作品があることを知り、近くの図書館で借りてきました!

 

 

あらすじ紹介&著者紹介

 

 それでは、本のあらすじ紹介&著者紹介をやっていきます。

この本は、1975年発刊の本です。もちろん書いてある内容としてはかなり古めかしいというか、固い感じの印象を受けるものでしたが、それでも違和感なく読み進めていけます。

 

 ここでは、1970年代ごろの高度経済成長期につながる活動をしている通産官僚たちの姿を描いています。

主人公たちは「特産産業振興臨時措置法案」(通称:特振法案)を推し進めており、その法案を進める間の自体の移り変わりが読み取れます。

この法案、実際に提出されたもので、登場人物も含めて多くのことが事実なんだと思います。もちろん脚色は多くあると思いますが…。

 

 ちなみに、主人公の風越信吾は佐橋滋さんをモデルにしており、

「ミスター・通産省」「人事の風越」「無心臓」など色々な異名、あだ名があります。

 

彼は、能力あるものが昇進すべきでところてん人事は改革すべきと考え、人事カードを自分で動かして次の人事を予想するのが趣味です。

また、日本の発展をねがって自分の信じるところのためにどんどん行動する熱血人間でもあります。

ただ、細かい言い回しだったり人に気を使うことだったりは面倒臭がるため、マスコミからは格好のネタに押され、同僚はそれを嫌悪し、部下はどうにかいさめようと頑張ります。

 

 他にも、池田勇人田中角栄佐藤栄作など、中学社会でも出てくる超有名な人たちがモデルとなっています。

別にそこらへんを求めて読むわけではないのでかなりの脇役でもありますが、

大抵そういったビッグネームって中心的人物として描かれているので、

こういう視点でも観れたんだ…という感想になりました。

 

 著者の城山三郎さんは、経済小説の開拓者と言われ、伝記小説や歴史小説なども多く書いています。

今でも角川によって、城山三郎賞という賞が創設されています。

『落日燃ゆ』や、『輸出』などいくつかの本で色々な賞を受賞されています。

 

 

 

感想:真似はしないが憧れる!

 

 それでは、感想を書いていきます。ナチュラルにネタバレを含むかもしれないので、ご注意ください。

 

 この本は、主人公が風越信吾で、三人称で語られます。

 

普通、こういった本って主人公に感情移入することが多いと思うんです。この本も、ある程度は感情移入しました。

でも「無定量 無制限」に働くやり方など、私とは全然違う方針というかやり方をとっているところが多く、読んでいて「この人の下では働きたくないな…」と思ったのも確かです。

 いつもは自分が非難するタイプが主人公だと、なんか複雑な気になります。

小説自体はとても面白かったですし、こんな人生もいいな、と思わせてくれます。

でも、一度我に帰ると、この人のやり方には非難するべき点もいっぱいあるし、こんな人の下では働きたくないと思うんです。

 

 自分の元々の意見を一時的にでも捻じ曲げる小説って、もちろんあるにはありますがそういった本に出会えるととても嬉しくなります。

この本も、淡々と動いているように見えて静と動が激しいというか、熱気のある作品でした。

 

 私はまだ社会に出て働いていないので、「人事」は身近なものではありません。

ですが、本とかで「〇〇部に入りたかったのに〇〇部に異動になった…」といったあらすじの本はよく読んだことがあります。

 そういう時にも思っていましたが、人事の大切さはこの本でとても認識できた感じです。

 

どういった役職にどういった人がつくのか。

何を優先させるのか。

その人がつくことであるメリットとは。

どういった役職は最終的に不利になるか。

 

色々なポイントがあるんですね。とても面白かったですし、新しい世界を垣間見れた感じでした。

 

 人事異動に関連して、他にも省間での権力争いだったり、出世争いだったり、色々と考えることが多そうな話題も多く出されていました。

人と人とのいざこざはこうやって生まれるのか…と政治官僚の世界を覗き見れたと思います。

 

 

 

立法を推進するうちに過ごす、暑い暑い夏で懸命にがむしゃらに突き進んでいった風越。

最後に訪れた季節は冬でした。

政治官僚としてそれなりの地位まで登りつめたのに、最終的には新聞記者に在り方を諭される始末。

 

これは、風越が可哀想になります。

それでも、風越の提唱する「無定量無際限」は私は苦手な考え方です。今でいう過労死だったり、オーバーワークだったりをどんどん推奨するような内容でした。

 

今の感覚を持っているから、私がこれに否定的なのか。それとも、生理的にこの考えが苦手なのか。よくわかりません。

でも、私は正直給料程度のことをやれば何も批判されるいわれはないと思っています。

私はどちらかというと自分からやりたいことを増やすようなところ(これは風越よりかも?)がありますが、

それでもこの働き方はもう絶対に許容されませんし、許容されてはいけないとも思います。

 

 かといって、ここに書いてあること全てを否定するわけではありません。

彼らの生き様だったり、心境だったり、もしくは考えていることなどを文章から、言葉から読み取ることはとても面白いと思います。

自分の考えと反対の考え、という点でも学ぶべきことはたくさんあるはずです。

 

天下りだったり、年功序列だったり、もしくはところてん人事だったり、そういったことが普通に行われていた時代です。(年功序列は今でもありますが)

そして、出てくる女性職員も違和感を覚えるほどには少なかったです。

 

そういった状況も含め、一時代前の話であることに疑いはないと思います。旧世代といってもいいのかもしれません。

でも、旧世代であるからこそ学ぶべきこともあります。私は無定量で働きたくはありませんが、それでもそういった生き様に憧れないとは言えません。

 

自分のやりたいことを考え、国のためを思い、とことん働き通す。

 

やりたくはないんですよ、これは本当です。

でも、憧れます。

こんな生き方を一回はしてみたい。ここまで情熱を傾けたい。

そう思うことも本当なんです。

もう許されない行動。だからこそ憧れるのかもしれません。

 

 

まとめ:改革、改革、そしてそれを呑み込む改革の波

 

 官僚ものは初めて読みましたが、とても面白かったです。

「もはや戦後ではない」昭和30年代から、

池田勇人(登場人物の一人は池田勇人をモデルとしています)の所得倍増計画に移る少し前くらいまで。

 

そんな時代の、官僚と政府が描かれています。

しかも、1975年出版なのでかなり感覚は当時に近いはずです。

乗り切れないところもあるかもしれませんが、学ぶところが多く、そして少し虚しくなるラストがとても面白かったです。

熱くて、それでいて淡々としている語り方にも興味を持ちました。

 

官僚の意識の変換(働き方関係)も、ちょうどこれくらいの時期だったんでしょう。

高度経済成長期ってこんなんだったんだ…という感想。変革、変革、それを飲み込むさらなる変革、といった感じです。

 

この時期、政治について思うことは色々とあるかと思います。

別に「昔は良かった、今は…」とかいうことを若干15歳で政治について何もわかっていない私がいうわけではありません。

ただ、事例として色々な姿の政治を知っておくのは今後のためにもいいんじゃないかな、と思います。

確実に今の政治の体型に繋がっているだろうという部分も読んでいて出てきました。

 

 最後までお読みくださりありがとうございました。明日は、なぜか朝早くからミーティングです…。もう朝早く起きたくない…。でも頑張ります!!ということで、今回は『官僚たちの夏』の感想を書きました。興味を持った方は是非読んでみてください!