うぐいすの音

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太宰治『満願』感想:いろいろな工夫が見えてくる!

 こんにちは。あと10日で入学!なんとなくカウントダウンもよく考えるようになり、やらなければいけないことをリストアップしている状態です。

 

 今日は、太宰治の短編集、新潮文庫走れメロス』から、短編『

 

 

』についての感想を書いていきます。

 

 

短編集と著者の紹介

 それでは、まずは短編集と著者の紹介をしていきます。これは、過去記事からのコピペとなります。

 短編集は、新潮文庫出版『走れメロス』。

 

 

収録作品は、

  1. ダス・ゲマイネ
  2. 満願
  3. 富嶽百景
  4. 女生徒
  5. 駆込み訴え
  6. 東京八景
  7. 帰去来
  8. 故郷

の8編です。

このうち、『女生徒』は感想を書いたことがあるため。7編の感想を書いていきます。

 

chirpspring.hatenablog.com

 

 

 

 太宰治は、多くの人が知っていると思います。

坂口安吾などと並ぶ「無頼派」に属する作家で、青森県出身です。戸籍名は津島修二。中期の「走れメロス」などは明るい雰囲気で、前期・後期の作品とは少し変わった作風です。

 この『走れメロス』は教科書教材の定番ですし、『人間失格』と言う強烈な題名を知っている、と言う方も多いのではないでしょうか。

 彼は何回か自殺未遂を繰り返していますが、38歳の時に愛人と入水自殺をしました。原因としては、息子がダウン症だったことなどが関わっている、と言われています。

 戦前から戦後ごろに活動し、自殺未遂の他にも金遣いなどを含め、かなり癖の強い人生を送っています。

 

 太宰治読了記事のまとめも作ったので、興味のある方は是非そちらもご覧ください。

 

chirpspring.hatenablog.com

 

 

 

あらすじ

 それでは、『満願』のあらすじを書いていきます。

 

 主人公の「私」は、酔っている時に怪我をし、慌ててお医者に駆けつけます。そこで出てきた医者も酔っていたため、彼らはどこかおかしくなり、くすくす笑いから初めて二人ともで大笑いをしました。そこから意気投合し、彼らは仲良くなります。

 医者は哲学を好み、原始二元論(世の中の有様を全て善玉悪玉の合戦と見る)を語ります。「私」も、文学より哲学を語る方が好きだったため、話は弾みました。

 

 「私」は、ほとんど毎朝散歩の合間に医者の家に立ち寄り、医者がとっている5種類の新聞を30分かそこらで読んでいました。 

そうやって入り浸っている間に、「私」はある女性をよく見かけるようになります。簡単服に下駄を履き清潔な印象を与える女性です。彼女は、肺を患っている夫の薬を医者の家に取りにきていて、療養のおかげで体調は快方へ。

医者も、「奥様、もう少しのご辛抱ですよ」と言っているため、状態がよくなっていることがわかります。

 

 ある日、その女性はパラソルをくるくると 回し、飛ぶように歩いていきます。それをみて医者の奥さんは、「お許しが出た」と言っています。

その光景を、「私」は「美しいものを見た」「胸がいっぱいになった」と表していました。

 

 「私」は、この出来事を「お医者の奥さんのさしがねかもしれない」と考えています。最後の文がこちらです。

 

三年、と一口に言っても、ー胸が一ぱいになった。年つき経つほど、私には、あの女性の姿が美しく思われる。あれは、お医者の奥さんのさしがねかも知れない。

 

 

 

感想1:初見ではわからなかった言葉の意味

 

こちらの作品は、とても短いです。これぞ「短」編。文庫本で、3ページもありません。こんなに短くて、作品として成立するんだ…。

ショートショートだったり、エッセイだったりなら、これくらいの長さのものもよく見ます。でも、小説という類で見るのは初めてかも知れません。

 

 

 この作品、いくつか、初見では「ん?」となった部分がありました。でも、二回目よめばしっかり理解できた…と思います。ここでは、解説というか、最初わからなかった言葉の意味を考えていきます。

 

 まず、「お許し」と「辛抱」について。これは、夫婦生活についてだと思います。この女性に関する描写で、よく「清潔」という言葉が出てくるので、これはほとんど間違いないかと。

 若い夫婦が、3年間辛抱してきてお許しが出たのなら、「満願」というタイトルもわかるような気がします。

思ったのは、言葉の使い方について。最初読んだときは、何を言いたいのかよくわかりませんでした。もちろん、周りに聞かせることが目的の言葉ではないのでわからなくても当たり前なんですが。

 そう言ったことについてお医者から言われるのって、少し抵抗があると思います。それを、こうやってあやふやな言葉で表すのは、なんかいいな、と思いました。優しさが現れているような感じです。

 

 そして、「さしがね」の意味。これは、ちょっとよくわかりませんでした…。でも、「私」の正体から「さしがね」を想像することもできます。

 

 

 「私」は、伊豆の知り合いの家でロマネスクという小説を執筆していた、と冒頭に書いてあります。

太宰治の作品にもロマネスクはあるので、今までと同じようにこの「私」は太宰本人、もしくは太宰をモデルにした人物だと考えられます。

それならば、太宰が女性関係でかなりこじれていたというか、奔放的だったのは有名ですよね。

医者の奥さんも、それを見越した上で純粋な幸せのカタチというか、男女の関係を見せたかったのでは…、という予想ができました。

「お許し」がでて幸せに溢れている女性を見せることで、そう言った幸せの形を見せて、参考にしてもらえるように仕向けたのでは。

 

 

 他にも解釈の仕方はあるかも知れません。なんの差し金なのかが書いていないため、推測にも何通りかある気がします…。

ただ、今のところ思いついたのは、「太宰に幸せのカタチを見せること」でした。こうだとしたら、少しお節介な気もしますが、実際に太宰に影響を与えているからいいのかな?

お医者の奥さんのイメージが、ちょっとたくましくなりそうです。

 

 よくわからなかった言葉の意味は、この「お許し」「辛抱」「さしがね」でした。

 

 

 

感想2:文に凝らされた趣向

 他にも、この本を読んで感じたことがいくつかあります。

 

まず、読んでいてとても清潔な印象を与える本だということ。

本文の中にも、女性を表す言葉として何回か「清潔」が出てきます。

簡単服に、下駄を履き、最後のシーンでは

(中略)さっさっと飛ぶようにして歩いて行った。白いパラソルをくるくるっとまわした。

と書いています。

 

なんとなく、白いワンピースと白いパラソルで、夏の小道を歩いている絵が思い出されます。

ちなみに簡単服を調べてみると、「単純な型のワンピース」と出てきたため、その想像も間違ってはいなさそうです。

 

 この女性を表す言葉も、「清潔」というイメージが映し出されています。

 

また、お医者の描写の中にも「歯切れが良かった」という言葉が出てき、

医者の奥さんには「色が白く上品であった」、

奥さんの弟には「おとなしい少年」、

どれも、汚いような印象を与えない、清潔感のある描写です。

 

 

 さらに、清潔感の促進として、汗とか血とかの生臭い描写がないこと。「私」が医者に行くきっかけは怪我でしたが、それでも「だらだら」とか「赤」とかの描写はなく、簡潔に「裂いた」「出血が大変で」でした。

 

 また、夏だというのに、「太陽がかんかん照りで〜」とか「暑苦しく〜」とか、「汗がだらだらと流れて〜」的な、夏によくある暑さ、ジメジメとした空気などを全く描いていないんです。

 だから、夏だというのにさっぱりとした感じの読了感をえられるんだと思います。

 

 出てくる単語も、

「座敷の縁側」「冷い麦茶」「風に吹かれて」「青草原」「水量たっぷりの小川」「牛乳配達」

などと、どれもさっぱりしたイメージや、清々しいイメージを与える言葉ばかりです。

 

 こうやって、言葉のみでその季節の印象を決めるというか持たせるのって、すごいなと思います。読んでいて、夏の話なのに「暑い」と言うイメージがあまり出てこなく、「快適」なイメージがほとんどでした。

 

 他にも面白かったのは、リズムの良さです。

 

「ふらふら」

「くすくす」

「なかなか」

「ぱらぱら」

「ゆるゆる」

「ときどき」

「さっさっ」

「くるくる」

 

こう行った、リズムの良い言葉が連なって出てくるため、読んでいて飽きません。(飽きるほど分量がないとも言えますが)

 

 

これらの爽やかな言葉遣いだったり、リズム感のいい言葉遣いだったり、小説に凝らされた工夫がよく見える本だと思います。

 

「私」の感じた美しさも、とてもよくわかった気になりました。イメージしやすいから、なおさらでしょうか。

美しい、綺麗、爽やか、涼しい

そう行った言葉の似合う作品だったと思います。

 

たった3ぺーじにも満たない作品なのに、こんなに面白くなるなんて…。言葉って、文章ってすごいですね。

太宰ももちろんすごいんでしょうね。

 

読んでいて楽しかったです。こんな文章を夏に読むと、なんだか涼しくなったような気がします。

 

 

 

最後に

 と言うことで、今回は「満願」の感想を書いてきました。とても面白い作品だったし、読んでいて勉強になりました。

趣向(と言えるのかはわかりませんが)が凝らされているのがなんとなく読み取れる作品って、自分も賢くなったような錯覚を覚えさせてくれます。

書いてあること、特に「お許し」の部分は、生々しく感じても仕方ないと思うのに、その生々しさを一切感じさせない爽やかさは、とても面白かったです。

 

こんな文章を書いてみたい…!

 

なんか、「中期の作品は明るい」と言われる太宰の本ですが、「走れメロス」も含めてすごい明るい、と感じたわけではありませんでした。だけど、この作品は本当に明るいです。

ちょっと意外にも思える作品。

 

最後までお読みくださりありがとうございました。この頃、ブログの文章へのエフェクト(太字、下線など)がおろそかになっていますが、多分そろそろましになります。読みづらかったらすみません…!