うぐいすの音

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世間に寄席を広めたい 2024末廣亭7月上席(主任・松鯉)の感想

こんにちは、うぐいすです!

今日は、落語に関する記事を書いていきます。好きなことに関して書くと前回の卒業記事でも誓ったばかりなので、自分に誠実に!

 

今日書いていくのは、先日訪れた新宿末廣亭の夜席の感想と、思ったことなど!

6月下旬から7月上旬にかけて、2週間ほど東京にいました。その際に久しぶりに末廣亭に行き、初の神田松鯉の講談を見てきました!!

 

 

 

寄席って何?

さて、まずはこのブログを読んでくださっている方や偶然この記事に辿り着いた方に、落語や講談とは何か、そして神田松鯉とは誰なのかを説明してきます。

松鯉先生なんてとうの昔から知ってるよ!という方々は、目次から末廣亭の感想に飛んでいただければ、感想がずらっと書かれています。興味がおありでしたら是非!

 

ということで、まずは簡単な説明から。

落語や講談、名前は聞いた事があっても、何なのかは知らない方が多いのではないでしょうか。

 

落語って何?

落語は、一人の演者が舞台の上で芝居をする、日本の伝統芸能の一つです。

その歴史は江戸時代の中期ごろから始まっており、現在も千人ほどが東京、大阪を中心に落語家として生活しています。

 

落語は聞いた事がなくても、テレビで『笑点』を見た事はありませんか?

笑点』で行われているのは落語ではなく、寄席(落語が行われる場所)で余興的に行われていた「大喜利」です。大喜利」は落語とは異なりますが、出演しているメンバーは落語家のため、笑点から興味を持って落語を聞いた事がある、という人はいるかも。

 

基本的に落語で語られるのは「滑稽噺」、何か面白いオチのついた笑える話が多いですが、中には泣ける噺、怖い噺、不思議な噺なども。噺の長さも3秒ほどの短い小噺(駄洒落など)から、1~2時間かかる長講まで、バラエティに富んでいます。

寄席は落語を聞くには一番敷居の低い場所で、年中毎日2回ずつ落語やその他の演芸を3時間ほど通して披露しています。寄席は東京、大阪、仙台など限られた都市にしかありませんが、他にも落語会や地方寄席などが全国で定期的に開かれているため、調べてみたら意外と身近に機会は転がっているかもしれません。

 

かくいう私も、東京を去り長野に来た後、数年間生の落語には触れていなかったのですが、地方寄席のおかげで去年、久しぶりに落語を見る事ができました。

 

chirpspring.hatenablog.com

 

講談、神田松鯉って何?

そんな落語と同じような場所で言及されることも多い講談

講談とは、簡単に言ってしまえば歴史上のお話を一人で演じる芸のことです。落語は会話文をメインにして聞かせますが、講談は目の前で起こっていることをそのまま実況するかのように話します。江戸時代から、過去の歴史や出来事を面白おかしく、庶民にもわかりやすく伝える芸として親しまれてきました。

また、釈台と言われる小さな木机を張り扇で叩き、調子をとりながらリズミカルに話すことも特徴の一つです。

 

冒頭で言及した「神田松鯉」という方は、この講談を演じる講談師です。神田松鯉という名跡があり、当代の松鯉は三代目。現在の日本講談教会名誉会長を務められています。2019年に人間国宝に認定されていることでも知られています。

 

成金メンバーについて

現在、落語・講談界隈で人気を博している人たちの中に、もともと「成金」というグループに入っていた人たちが多く見られます。この「成金」は、当時二つ目(落語家の階級の一つで、三つある階級のうち真ん中のもの)だった落語協会所属の落語家・講談師が集まって結成したグループ

今は全員真打(落語家の階級のうち一番上のもの)に上がっているため年に一回ほどしか集まりは見られませんが、このグループにいた人たちは本当に今注目の的となっていて…。もう、ぶらっと訪れてのんびりと聞くはずの寄席に人が殺到して開演前から並んでも席が取れないなんてこともあるくらい。

 

私が末廣亭に行ったのは7月5日だったのですが、この日も成金出身のメンバーが多くいました。末廣亭は普通の椅子席のみならず、桟敷席、そして普段は閉められている2階席があります。

私はこの日、初めて、桟敷席も立ち見も全てが埋まり、2階席もほとんどが埋まった末廣亭を体験しました。

 

東京に住んでいた際はあまりに混みそうな日は行かないようにしていたのですが、地方在住となるとそうも言っていられません。金曜日の夜、もちろん混むだろうと覚悟はしていましたがやはり驚きましたね…!

 

出演していた成金メンバーは三人。桂伸衛門さん、神田伯山さん、そして春風亭柳雀さん。神田伯山さんは、先ほど言及した神田松鯉師匠のお弟子さんで、メインパーソナリティをしている「問わず語りの神田伯山」というラジオ番組も大人気です。

 

他にもこの日は伯山の姉弟子である神田阿久鯉さんや三遊亭遊雀さん、それに雷門小助六さんなど、聞きたい!!と思っていた人たちがずらっと勢揃い。始まる前から期待が鰻登りの番組でした。

 

7月5日新宿末廣亭の感想!

ということで、期待と客席の混み具合への驚きから始まった夜席。

一言で言うと、やっぱり寄席って最高…。

 

一人、もしくは少人数の芸をじっくり味わう落語会も好きなんですが、もともと私は寄席の雰囲気に幼い頃から惹かれていたので、やはり寄席が一番落ち着きますし楽しめます。目まぐるしく演目が変わっていく中で、客席もだんだんと一体となりトリの松鯉先生をお迎えするような感覚。あの、仕切りのない空間で感覚が溶け合っていくような、どこか麻痺していくような、そんな非日常感あふれる時間が大好きです。

 

と言うことで、それぞれの方の芸の感想を言っていってはキリがないので、今回は記憶に特に残った部分だけをピックアップ。

ちなみに、この日は寄席の前に神保町で友達と楽しみすぎて、結局寄席についた時は三人目の演者さんからでした…。前座さんから聞いていたいので、これは反省、次はちゃんと時間に気をつけます。多分私が最後の桟敷席だったのかな?次に入ってきた人から2階席に案内されていたので、ちょっと羨ましいとか思いつつ。

 

末広亭 X アカウントより

 

①ねづっち、桂優々、桂伸衛門、ぴろき

入った際に演じていたのはお馴染みねづっち。安定の面白さと、安定の回答の速さでした。出番が先の方だったこともあり客席がまだ温まってはいないような感触でしたが、「整いました」から始まる謎かけの際は、我先にと手をあげる方々の熱量に釣られてどんどん周りが引き込まれていくのを感じました。

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その次は桂優々さん。この人は初めて!上方落語も久方ぶりに聞きましたが、聞いていて明るくなるというか、知らない間にこちらの脳内を上方訛りにしてくるような感覚(笑)。演目は「池田の牛ほめ」。楽しかったです。

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その後、先ほども紹介した成金メンバーのうちの一人桂伸衛門さんが登場。

私、伸衛門さんは生で聞くのが3度目なんですが、多分今回は2度目の「辻占の独楽」…な気がする。動画で見ていても同じなんですが、伸衛門さんの落語って、毎回聞いていてよくわからない感覚に襲われる気がします。淡々と、実直な語りをするなって思った瞬間に想像していた以上に柔らかい雰囲気になったりだとか。魅力を言語化できるほど聞けていないので、もうちょっと、画面上だけじゃなくて生で見たいなあ。

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その後に出てきたのはウクレレ漫談ぴろきさん。名前は知っているものの、見るのは初めて!ただ、正直マイクの音が小さい&私の席がかなり後方だったためあまり聞き取れず。もうちょっとちゃんと聞けていたら、とは思いますが、こういう運による左右があるからこそ「寄席通い」が楽しくなるんでしょうね。

 

雷門小助六神田阿久鯉山上兄弟、神田伯山

漫談、落語、落語、漫談ときて、次もまたまた落語。

雷門小助六さんの「しらみ茶屋」。天下一品。

助六さんは、まだ東京に住んでいた時に拝見したことはあるものの、あまり覚えておらず。高座(落語を一席やること)の後に寄席踊りを入れる噺家さん、と言う知識のみでいきました。「しらみ茶屋」は、大店の旦那がシラミをたくさん用意し、芸者さんたちに内緒でシラミを彼女らにどんどんつけていくという、平たく言えば汚い噺。

なかなかにどぎつい内容の話ではあると思うのですが、小助六さんのしらみ茶屋は絶品でした。うまい具合にその汚さを所作のコミカルさで中和していき、最後は十八番の踊りに持っていくことで嫌な感情を払拭しながら終わらせるという。

もう一回聞けないかな〜、と今から出演情報をチェックしています。

 

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助六さんの後に、一回は聞いておきたかった神田阿久鯉さんの講談。神田伯山のYouTubeチャンネル「神田伯山ティービー」視聴者からすると阿久鯉姉さんと呼んでしまいたくなるような方。

子供の頃、地域寄席で神田織音さんの講談をよく聞いていました。それ以来女性講談師さんを聞くのは初めてで、講談自体も伯山さん以外ほとんど生で聞いていなかったものですから、少しドキドキしながら迎えた「水戸黄門記 火吹竹のいさめ」。

楽しかった〜〜!!!

金曜日の夜ということもあり、あとは神田伯山・松鯉が出るということもあり、かなりライト層の多い寄席だったと思うんですよね。(もちろん私もそのうちの一人なんですが。)だからか、阿久鯉さんに限らず、割ととっつきやすい噺の多い印象でした。水戸黄門記も、子供にもわかりやすいですから幼い時に何回か聞いた覚えがあります。

 

そんなことも考えながら聞いた講談。声に深みがあって、真っ直ぐに聴き手に情景を伝えるような印象を受けました。ハリがあって、知らず知らずのうちにその迫力に息を呑んでしまうような。

 

動画は、この日の演目ではありませんがYouTubeに上がっているもの。

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助六さん、阿久鯉さんと立て続けにどっと沸いた客席で、次に来たのが山上兄弟。ずっと前から活躍されている奇術師のお二人で、実の兄弟。落語芸術協会に所属したのが2017年のことらしいので、私が寄席に頻繁に通えなくなった頃からでしょうか。多分初めてな気がする…。

マジック漫談は楽しいです。マジックってだけでも、毎回ワクワクしながら、たまにハラハラしながら見るのですが、そこに山上兄弟のように漫談もかなりの配分を振ってしまったらもう、五感全てを使って楽しんでいるような、そんな感覚に陥ります。あと、単純にツボなネタも何個かあり。またみたい!

 

十分に客席が沸いたところで、お待ちかねの神田伯山先生。伯山は、いろいろな媒体に出演するたびに「今最もチケットが取れない講談師」と紹介されており、講談ブームの火付け役とも言われている超人気者。長野の片田舎でも、知り合いの知り合いが神田伯山を聴きに東京まで車を飛ばしたなんて話を聞きました。

 

私も伯山のYouTubeで流れている連続物を見てからよく聞くようになり、実際に生で見れたのも5回目とか…?ちなみにこの数字、多くないようにも見えますが、長野住まいの高校生にしては頑張ってる数字です!密かに伯山の出演日を調べながら東京に遊びにいく日を決めたりしています。

 

この日読んだのは、出世浄瑠璃

秋の碓氷峠が舞台の話なので、碓氷峠の近くに住んでいる私は地味に沸いてました。

安心安全の伯山先生、今回も十分に客を沸かせ、満足感が半端なかったです。

 

私が伯山さんの講談を聞いていて特に惹き込まれる点は主に二つあり、一つ目が張り扇のタイミング。

 

どうしても、人間の集中なんてすぐに切れてしまう物です。一番高い集中力が続くのは3分、ある程度集中できるのは20分までと言われる中で、数時間の寄席に集中するなんて到底無理な話です。だからこそ色物を落語の間に挟んだり、落語そのものも全員演じる内容が被らないようにしたりするわけなんですが、講談では場面転換や重要なシーンなどで張り扇を叩き、緩急をつけていきます。

 

伯山さんの講談でももちろんこの張り扇を叩いて、クライマックスに向けて盛り上がりを作っていきます。

ですが、その張り扇のなるタイミングや強弱、間の取り方に叩いたあとの話し出し方。そういった一つ一つの要素が特に客の集中を惹きつけている。伯山の講談を聞いていると、周りの人の身じろぎが全く気にならなくなりますし、聞いている情景が一気に頭の中で映像として浮かび上がってくるようで。

 

そんな張り扇の使い方の他に、初めて聞いた時にびっくりしたのがその聞きやすさ。

どうしても、昔の出来事をそのまま読むのですから言い回しも言葉遣いも現代とは異なります。

 

それでも、うまい具合に枕や、時には話の途中でも、少し突っかかるような言葉を解説してサラッと本題に戻っていく。そんな誰にでも門戸を開く喋り方が好きになりました。

どうしても、講談を聞いていると落語を聞いている時より一瞬考える時間が多くなります。例えば、この人物は誰だったっけ、だったり、この言い回しはどこから来たんだっけ、だったり。そんな一瞬の突っかかりをうまい具合に解消してくれるのが、伯山さんの講談です。

この人の講談はどれを聞いてもその世界に入り込めるので、ぜひスキマ時間に見てみてください!

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ちょーっと書きすぎちゃった気もしていますが、ここまでが夜席の前半。伯山の後は中入りで、15分ほど?の休憩になりました。

 

宮田陽・昇、春風亭柳雀、三遊亭遊雀ボンボンブラザーズ神田松鯉

この後は、もうどっしりとした看板が並んでます。

漫才の宮田陽・昇は本当に面白い。

中入りの後って、リラックスした分波に乗りやすいんですが、同時にしらっとした雰囲気になることも。そんな中、陽・昇が出てきてからの爆発力は圧倒的でした。息を呑むような瞬間はもちろんいっぱいありましたが、突発的な笑いという意味ではこの日一番だったのではないでしょうか。

久しぶりに見た芸人さんでしたが、とっても楽しかったです…!

 

そして、春風亭柳雀さんが「青菜」というお話を。柳雀さんは時々生でも聞いていますが、落ち着いた落語をする人なのかな、と思いきやこの人も爆発する人でした。「青菜」はもともとひょうきんな話ですが、そのおかしさがより際立っていました。自然と笑顔になれる高座です。

s-ryujaku.jimdofree.com

 

最後に近づいてきました、三遊亭遊雀師匠の「電話の遊び」。遊雀さんの落語好きなんですよね。落語がわかりいいのはもちろん、声の使い方や仕草、表情が秀逸で。伯山さんの講談は、聞いていてこちらがどんどん鮮明に想像できるのですが、遊雀さんの落語はこちらがイメージを作っていく前にすでに型取りされてしまうような。高座を聞いていて、目が離せません。この人のトリが見てみたい。トリでないと、どうしても長い噺や滑稽噺以外のものが聞けないんですよね。「電話の遊び」は多分珍しい方の話で、貴重な体験だったとは思うのですが、ここまで陽の話で惹きつけられると、今度は陰の話も聞いてみたくなります。

 

独演会とかいきたくても、やっぱり地方だとどうしても、歯痒いです…。神田伯山のYouTubeに出てくる遊雀さんの一席を垣間見て、心を落ち着かせる今日この頃。でも、やっぱり動画より現地で聴きたい。

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トリの前の出番のことを「ひざ代わり」と言います。客を飽きさせずにトリにまで持っていく難しい出番、大抵はベテランの芸人が演じます。

あ、ちなみにひざ代わりの前の演者(基本落語家)をヒザ前と言ったり、中入りの後の演者をくいつきと言ったり、ここら辺の言い回しは気持ちが良いです。

 

この日はボンボンブラザーズという、超ベテランの太神楽曲芸の演技。めちゃくちゃベテラン、もう60年以上はコンビでやっているはずです。私も一番寄席に通っていた小学校中学年の頃によく拝見していましたが、観客巻き込み型の芸に参加できた時などは心が輝いていました!

そんな、小学生の時は親に連れられて昼席で見ていたボンボンブラザーズを、今度は新宿末廣亭で見る。じんわりとした安心感というか、変わらないものに対する喜びを感じました。もちろん変わらないものなんてないですが、いつまでも元気でいてほしいです。

 

この日はなんと、いつものように観客巻き込み型の演技をしていく中で、ハプニングが。投げた帽子を観客の一人に被ってもらうという芸ですが、観客の方の頭のサイズが大きかったのかなかなか成功せず。でも、芸人さんの方も一回始めてしまった手前やめようということはできません。観客全員が拍手で応援をしながら、流石にそろそろトリの出番に影響するんじゃ…?と思うような長い時間が流れた後、ようやく成功!あの時の一気に空気がほぐれるような時間は全員に共通していたのではないでしょうか。

 

まさかこんなに長く私が感想を書いていくとは思っていませんでした。

最後を飾るのは主任、神田松鯉

 

やっと見られた…。

講談といえば、私が知っていたのは数年前に亡くなられた6代目一龍斎貞水と、この神田松鯉の二人。どちらも人間国宝です。勢いに任せる高座が多くなった、人情物ができる人が少なくなったと昔を知る人はよく言いますが、淡々と、それでもじっくりと講談をかけるこの人の高座は絶対に見た方がいいと、何人もの方に言われました。

 

私はこの日、夜席ではなく昼席に行こうかかなり迷っていたのですが、最終的に夜席に行こうと決めたのも自分の祖父が神田松鯉は見ておいた方がいいと薦めてくれたおかげ。

 

夏の夜席ということで、演目は「お岩誕生」。怪談物です。

私はまだ講談も落語も言語化できるほどの語彙力がありませんが、松鯉さんの講談を聞いた後は背筋がゾワゾワし続けると言いますか。小一時間は興奮が冷めない状態でした。

 

怪談のため、少し特殊な演出も含まれています。もし、そういった演出を全く知りたくない、という方はまとめの項目まで飛ばしていただければありがたいです。伯山のYouTubeや落語家のTwitterを見ている、もしくは「幽大」という言葉をすでに知っている方は、すでに知っているネタかと思われます!

 

松鯉さんは、とても落ち着いた、柔らかい声を持っていると思います。どっしりとしていながらも、聞く人の心の中にスッと入ってくるような。

ですが、講談を読む中でその声がガラッと変わるんです。登場人物によって異なるのはもちろん、恐怖や悲哀が直接訴えかけてくる、感情がそのまま伝わってくる声になります。

お岩誕生は怪談ものですから、もちろん人の生死が関わってきます。

平穏な日常、普通の一コマの中で、突然ポタリと赤い血が滴り落ちる時。

そんな急転直下を、声と表情、仕草で存分に見るものの脳内に送り込んでくるような。

 

トリは基本40分以上は一つの演目を務めます。その間、固唾を飲んで次の言葉を待つ、次の身振りを見守る。客もその場に縛り付けられたような空気が漂っていました。

 

 

そして、最後の最後には寄席が暗転。いきなり暗くなり、その中からぼうっと浮かび上がる松鯉先生の顔。息を止めるように耳を傾けていると、突然うわああああああっと声が上がります。

怪談もので、稀に、「幽大(ゆうた)」と呼ばれる役職が登場します。これは、演者以外の誰かが少人数で客席に入り、高座中に周りの客を驚かせる人たちのことを指します。松鯉先生の「お岩誕生」、暗い寄席の中で言葉を聞き漏らさぬようじっとしていた客席に、突然二人のお面をつけた幽大が現れ、叫びながら客席を驚かしはじめました。

 

これは、度肝を抜かれたというかなんというか…。

大袈裟だと思うかもしれませんが、人間国宝の語る人殺しの世界にどっぷり浸かっている真っ最中のこれは、震えが止まりません。客もたまらず叫び出します。

年齢的にも今まで夜席に通うことってあまりなくて、基本昼席だったんです。やっと夜席に行けるようになったと思ったら、夜席の魅力をたっぷりと食らってしまいました。最高。

 

しかも、この日は幽大の一人が先ほど「電話の遊び」を演じた三遊亭遊雀。基本幽大は前座(落語家の階級の中で一番下)や見習いがやるものなんですが、まさかそんなベテランが?!と客席もざわめきました。もう一人は伯山さんのお弟子さんの若之丞さんでした。伯山さんのラジオで時々エピソードは聞くものの、まだ高座を見たことはないのでいつか機会があれば!

 

まとめ

驚いたことに、すでに8000字超。あれ、3000くらいの短い記事にする予定だったんだけど…。好きなことについて話していると、止まりません。

自分のためのブログなので、それでもこのまま突っ走ります!

 

 

ということで、この日の新宿末廣亭は大盛り上がり。

熱気も凄まじく、知らない人同士でも感想を言い合って。

やっぱり、寄席が好きだな、と感じます。その空間自体がとても好きですし、確かな歴史と技術に裏付けされた、心地よい居場所です。落語ブームが少しずつ起こっているとはいっても、私は身近の同年代で落語を聞いている人にほとんど会ったことがありません。落語という物自体は知っている、子供の頃に聞いたことがある、という人はいても、今でも時々聞くよ、といってくれる人は全くいなくて。

 

だから、友達を誘って寄席に連れて行ったことも何回かあります。

一緒に来てくれた人たちはその空間を好きだといってくれました。また一緒に行く約束をした人もいます。話を聞いて、自分も行ってみたいといってくれた友達もいます。

一回階段を登ってしまえば、全くハードルなんて感じない場所ですし、演者は客一人一人に噺を届けてくれます。

 

私が好きな場所を、もっと知ってほしいな、広まって行ってほしいな。

自分が宣伝できそうな時は宣伝することで、「え、落語なんて聞くの?」「若いのに珍しいね」と言われることが少しずつ減っていけばいいのですが…。年齢なんて関係なく、誰でも楽しめるのが落語ですから。

もちろんわかりにくい言葉はありますし、一定の想像力は必要となります。それでも、今の落語家さんたちが現代にそぐわない言葉を言い換えているように、芸能の世界も変わっているんです。もしここまでこんな長い記事を読んでくれた方がいたのなら、機会を見つけて、一回寄席に行ってみませんか?

楽しくないと感じたら、もしくは、寄席に行くのは面倒くさいと思うなら、YouTubeで色々な落語や講談の動画をながら見してみてください。あなたを楽しませる動画が必ずあるはずです。

 

最後までお読みくださりありがとうございました。寄席に集まる落語や講談などの日本の文化、日本の言葉、お笑い、芸能に、少しでも興味を持っていただければ嬉しいです!