うぐいすの音

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太宰治『燈籠』『皮膚と心』あらすじ、感想

 こんにちは。この頃雷がよくなっているので、外に出にくいです…。長野に来て雷は本当に落ちるんだということを学んだので、気をつけなきゃです!

 この頃、やらなければいけない課題の意味がわからなくて…。これまでもわからないことは多かったのですが、今回の課題はほんっとうにわからない!30%も理解できてないです。もう何をどうしていいやら状態ですが、できることはやりながら頑張っていきます(笑)

 

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 さて、先日『太宰治文学館 女生徒』の表題作、『女生徒』の感想を書いてきました。

 

chirpspring.hatenablog.com

 

今回は、その短編集の中から前半の方の作品を取り出して感想を少しずつ書いていきます。

 

 

目次

 

 

内容紹介、著者紹介

 

 それでは、まずは短編集の内容紹介と、著者紹介へ。

短編集は7編仕立てとなっています。以下の通りの順番です。

  1. 女生徒
  2. 燈籠
  3. 皮膚と心
  4. きりぎりす
  5. 千代女
  6. おさん
  7. 饗応夫人

どれも、女性を主人公とした作品で、悩みや日常のことについてを描いています。

 前回紹介した『女生徒』という作品は、14歳の女生徒が朝起きてから夜寝るまでに考えたことを告白体で書いた作品でした。

 

 著者は、太宰治です。太宰はもう有名ですね。

教科書題材でも『走れメロス』は定番ですし、『人間失格』という作品も題名のパワーがすごいので印象に残っている人も多いのではないでしょうか。

 青森県出身の作家で、戦前から戦後ぐらいにかけて活動しています。自殺未遂や薬物中毒などかなり破天荒というか、クセの強い人生を送ってきています。

 

 

 

『燈籠』あらすじ、登場人物など

 

 それでは、今回感想を描くのは『燈籠』と『皮膚と心』にしようと思っています。

 

まずは『燈籠』の感想から。

 

『燈籠』では、24歳の独身女性「さき子」が主人公です。経済的には貧しい家庭で、親が店を営んでいます

さき子は、自分が惚れている19歳の学生「水野さん」のために盗みをします。

その盗みは、遊びに行った時に水野さんを恥ずかしがらせないため、という理由からのものです。

 

そして、さき子は牢屋に入りたくないからと弁解し、泣きながら笑い出し、最終的に精神患者とみなされました。

さき子は親に連れて帰られ、さき子の親の営む店も数日閉店。

周りを近所の人が興味がてらにうろついています。最後、さき子は今までとは違う美しさを見つけ、そこで話が閉じられます。

 

 

『燈籠』感想:驚きと考察

 『女生徒』を読んだ時、私は「太宰治ってこんな柔らかい文章も書けるんだ!」とすごい驚きました。

人間失格』のイメージが強く、『女生徒』も悲観的なところはありましたが、『人間失格』に比べると全然気持ち悪くもないし共感できるところもより大奥あるんです。

 

 そうやって驚いた後、この『燈籠』を読んで、「あ、良かった。太宰だ」と思いました。

人間失格』よりも強烈ではないし、終始柔らかいというかつかみどころのないような印象です。弱々しいところもありながら飄々としている、という言い方が一番合っているのかもしれません。

 

 だけど、やっぱり物語を通してまとわりつく遣る瀬無さとかもどかしさ、

そして何と言っても直感的な気持ち悪さが、人間失格』と重なりました

必死に自分を擁護して、何かにすがりつこうとしている姿が悲観的に書かれています。しかも、一人称の文章なため、さらに思っていることとやっていることのつながりが見えて気持ち悪くなります。

*この場合の「気持ち悪い」は褒め言葉なので、誤解のないようお願いします!

 

(そこまで太宰作品を多く読んでいるわけではなく、

それに加えて『人間失格』は初めてしっかりと考察した思い出深い本なので、

比べる対象が全て『人間失格』になっているかも…。)

 

 さき子は、出自が確かではありません。

さき子の母親と父親は駆け落ちをしていますが、さき子の顔は母親側にも父親側にも似ておらず、誰が父親かわからないのです。

さき子はそれに対して、

私は、父の実の子です。誰がなんと言おうと、私は、それを信じております。

 といっています。

 

かといって家族仲がとてもいいわけでもなく、

父も母も、弱い人です。実の子の私にさえ、何かと遠慮をいたします。

という風に、少しちぐはぐしている親子のようにも見えました。

 

それでも、さき子は24年間ずっと親孝行をしてきました。

 

私は、これは「親孝行をしないと家族でいられないかも」といったような強迫観念があるのでは、と思っています。

さき子の両親がそういっているわけではなく、

さき子自身が「自分は実の子だ」と強くいうことでそれを刷り込ませ、その関係を壊さないようにしているのでは、と思いました。

「何かと遠慮を」というぐらいですから、あまり結束が強くないというか、脆い関係なのかもしれません。

 

 自分の立ち位置が見えないというのは不安なことですから、そうやって家族の絆を深めたかったのでは、というのが私の考えです。

 

 また、さき子は惚れやすいたちです。

おまわりさんに惚れたこともあれば、水野さんには眼科で一目惚れしています。さらに、夢中になったから万引きをしています。

これも、「水野さんとの関係」を維持するために、道を踏み外したのかもしれません。

 

「家族との関係」にも気を配り、「水野さんとの関係」にも気を配り、大変だったろうと思います。

その大変さが、文章の気持ち悪さにもつながっているのかもしれません。

 

 

この話は、最後の文章が救いです。

そこで、やっと目の前のことが見えている感じがします。

今までは親との関係から他人に指をさされて、さっきまでは水野さんのお友達の目を気にしていた。

だけど、最後の文でやっと他の人たちを眼中から外して、今いる人たちを意識したような気がしました。

 

 今までずっと悲観的だったのに、最後に急に覚醒しているので、「良かった…」という満足感よりも「あ、そっか、うん、おめでとう」みたいな肩透かし感が少しあったかも。でも、それもまた面白いです。

 

 ただ、「希望、救い」そんな言葉を思い浮かべても、やっていることとその時の状況を二度読みして整理すると、余計に悲しくなるかも

結局、お金がなかったり人から指をさされたりするとこうなるんだな…という感想も出てきます。

 

初読のときは救いの文章だな、と思いましたが、

2回目に読むとちょっとその気持ちも薄れました。

この文を希望ととるか、それとも惨めで哀れととるかは人によって違ってくると思います。

 

 

気持ち悪さ、

弱々しさ、

寂しさ、

遣る瀬無さ、

そういったものがまとまって、そして最後にいい方にも悪い方にも取れるラストがある。

こんな作品もあるんだ…という感じです。

そして、太宰作品は最低二度読みしたほうがいいということも改めて感じた作品でした。

 

 

 

『皮膚と心』あらすじと登場人物

 

 それでは、3作目の『皮膚と心』に行きましょう。

 

『皮膚と心』は、「私」の左胸の下に小豆に似た吹き出物が見つかったところから始まる話です。

「私」とその夫は、夫婦ともに容姿が良いわけではありません。

また、夫は離婚歴があります。

 

「私」にとって、容姿が良くなくても肌が綺麗なことは絶対に守りたいことでした。

どんな拷問をされても耐えるけど、シラミやうじを肌にかけられたりするのは絶対に耐えられない。

吹き出物が全身に回ってしまった私は、もう人ではない。

 

そんな、行きすぎた自己嫌悪を抱えています。

 

 夫は、そんな妻を見て病院に連れて行ってくれます。初めて言った「電車では行きたくない」というわがままも、快く聞いてくれました。

 

皮膚科で待っている間、「私」は病院が性病関係も取り扱っていたことから、夫に病気をうつされたのでは、と勘ぐりすらしてしまいます。

そして、その勘ぐりをしていることの意味に気づいた「私」は結局自分も愚かだと悟り、夫はそれに対して「むりがねえよ。わかるさ」と慰めます。

 

 

『皮膚と心』感想:太宰作品でいい男が出てきたんだが…

 

この作品、短編集『女生徒』の中で一番好きです。

少し気持ち悪いところもあるかもしれないけど、それを大きく上回る暖かさで、「太宰ってこんな作品書けるの?!」という二度目の衝撃が。

 

 太宰の作品で、思い込みが激しい人物が出てくるのはもう慣れました

今までの2作品もそうだったし、『人間失格』にも『走れメロス』にもそのきらいが出ていると思います。

 

 だから、この作品で一番驚いたのは「男」の側です。

主人公である「私」に付き添う主人が、今までの太宰作品の男性とは違っていました。

どちらかというと、『斜陽』とか『燈籠』、またはこの短編集に入っている『饗応夫人』など、

太宰作品では女性視点の作品だと「駄目な男」が出てきていると思っていました。

 

 

 この『皮膚と心』では、予想を裏切って男の側がとても妻思いなのです。

様子のおかしい妻を心配し、コンプレックスをかばい、わがままを聞いて金を払い、妻の自己嫌悪を取り除こうとする。

 「私」は夫のことを「一層おどおどしている」「自信のない」と言っていますが、そんな言葉とは似つかないような優しい夫の印象でした。

 

 『燈籠』は、ずっと暗いまま話が進んで、最後少しの救いが天から降ってくる、感じでした。

でも、『皮膚と心』は

一人称の「私」が暗くて自己嫌悪が強すぎても、夫の言葉で時々浮上するので、

そこまで暗くなりすぎなかったんだと思います。

 

少し行きすぎている自己嫌悪ですが、皮膚に限らずそう行った劣等感には覚えがある人も多いと思います。

そうやって、その時の気持ちが何と無く想像つくからこそ、夫の行動がより救いとなって降ってくる気がしました。

 

 

 28歳で「おばあちゃん」という部分は、今現代には通用しないというか、通用してもらいたくない感覚です。

ただ、この人は自分の肌の美しさとかそういったものに、容姿に自信がない分、プライドがあったんだろうなと思います。

 

夫の温かい行動は、果たして夫が妻を想うが故にやっていることなのか、

前妻とのやり取りの中で学んだことなのか。

それによっても、話の捉え方は少しずつ変わってくる気がします。

 

 ただ、前妻が関係あろうとなかろうと

「私」は夫を慕っているし、夫も「私」を大切にしている。

いい関係が築けるといいね、と希望が残る作品です。最後の文章も、青空の下で仲良く寄り添う二人が想像できます。

 

この話に関しては、まず「いい男が出てきてる…!」という衝撃が大きく、そこから肯定的に読むようになっています。

だから、もう少し悲観的に読もうとしたら読めるのかもしれません。

だけど、とりあえずは深読みしすぎずに、額面通りの言葉を受け取りたいです!

 

 

まとめ:次の太宰の感想も読んでみてください!

 ということで、『燈籠』と『皮膚と心』の感想を書いてきました。

『皮膚と心』は何と無く分かりますが、『燈籠』は少し題名の意味が…。

話の中で出てきているのは灯篭ではなくランプです。どう行った関連性があるのでしょう。そこを考えながら読むのもいいかもしれません。

 

それから、何回でも言いますが

女性の繊細な心理描写がとても細かい!

「この人こんなのも書けるの?!」という感想につきます。

太宰ってすごい…。文豪ってすごい…。

もっと早くこのすごさを知っておきたかったですが、遅すぎるということはないはずです。

 

短編集なら読みやすいですし、楽しいのでもっと読んでいきたいです!

女性独白調の作品は、全14編あるそうです。私は7作品しかまだ読んでいないので、見つけたいです。

 

この短編集は7作品あり、そのうちの3作品を今まで紹介しました。残りの4作品も紹介していくので、読んでみてください!

 最後までお読みくださりありがとうございました。ぜひ、興味を持った方は読んでいってください!