うぐいすの音

17歳の女子が運営しているブログ。本のレビューなどしていきます。

心をほぐす随筆のアンソロジー:『コーヒーと随筆』

こんにちは!今日もお疲れ様です!

更新頻度上げていきます!…って言っても、なかなかすぐには上がらないですね(笑)

 

 

今日は、そんな日々の中で読んだぜひおすすめしたい本を紹介していきます!

読んだ本は、『コーヒーと随筆』庄野雄治編。

この本、久しぶりにめちゃくちゃハマって、親にもすごい勢いで進めた本でした。

 

 

どれくらい「久しぶりにめちゃくちゃ」かというと、記憶を辿っても一冊を親に激推ししたのって、小6のマイケル・モーパーゴ『月にハミング』以来なんですよね。

 

chirpspring.hatenablog.com

 

その際は「死ぬ前に読まなきゃ後悔する」と言って親に読ませました。

 

この『コーヒーと随筆』も、死ぬ前に…とまでは言いませんでしたが、やはりすごく面白かった本です。

今回は、この随筆アンソロジーについて記事を書いていきます!

 

 

まず、この本の概要について。

庄野雄治さんが編集した、近代の随筆を集めたアンソロジーになっています。

いわゆる超有名な文豪たちのエッセイが集まっていて、意外な一面もあったり、思わず笑っちゃうところもあったり…。

 

この庄野雄治さん、編者紹介のところを見ると、かなり意外な経歴が載っていました。

1969年徳島県生まれ。大学卒業後、旅行会社に勤務。

2004年に焙煎機を購入し、コーヒーの焙煎を始める。

ここまではいいんです。

今の職業は、

2014年同じく徳島市内に「14g」を開店。

コーヒーロースター。

だそうで。

前書きでも、確かに「コーヒー屋」と名乗っています。

 

選ばれている随筆、その流れ、色々な点から、作家さんでなくても文学に関係するお仕事をやられているのかな、と思っていたらまさかのコーヒーロースターさんでした。

だから、『コーヒーと』なんだ…納得です。

(前書きの内容を途中から忘れていました、、、ごめんなさい。)

 

そんなコーヒーの専門家の方が選んだアンソロジー、『コーヒーと随筆』。

中身は、錚々たる文豪たちによる随筆の宝庫。

まさに序文の通り、

繰り返し読める随筆集

となっています。

 

以下が、収録されている作品の一部。

 

著者陣を見た時、「こんなに豪華なんだ!」って思いました。

普段は少し敷居が高くて、ちょっと躊躇うような「文豪」の人たちの作品も、この本を読んでからだと少し印象が変わるかもしれません。

100年近く前に書かれた作品も多くあります。

それでも、その面白さが全く損なわれないのは、この随筆アンソロジーの並べ方もあるのでしょう。

 

読んでいくうちに今までの硬いイメージと異なった文章に触れていき、「あれ?」となる。

 

そして、少しずつそれぞれの随筆の中に共通点が出ていきます。

読み終わった時の感覚は、もうたまらないです。

 

まず、一番最初の「畜犬談」インパクトたるや、素晴らしいものがありました。

太宰治のイメージって、基本的には走れメロス」「人間失格などがあると思います。かなり暗いというか、ちょっと特徴的な作風が知られているのかも。

この「畜犬談」は、太宰のキャラクターが好きになる作品だと思います。

いつもの暗い、苦しくなるような作品とは違い、ユーモアに溢れた、つい笑っちゃうような作品。

「畜犬談」を読むと、太宰のイメージは一変すると思います。

卑屈さも備えつつ、弱々しさと優しさも少しずつ出しつつ、最終的にはどうしても本音を捨てられない。

「可愛い」「ツンデレ」なんて言葉は太宰にはあまり使われませんが、この話にはそう言った要素もあるかもしれません。ユーモアに溢れる作品です。

 

ちなみに私は太宰の作品が大好きなので、以下の記事も興味があれば読んでみてください!

chirpspring.hatenablog.com

 

この作品で、一気に惹きつけられて読み進めていくと、北大路魯山人から織田作之助から、それまでのちょっと硬いイメージのあった人たちが日常を書き進めている随筆が並んでいきます。

 

特に芥川龍之介の「ピアノ」は秀逸でした。

芥川の文章を、私も読んでみたことはあるのですが、正直あまり好きにはなれなかったんです。

でも、この随筆はスッと入ってきて、読んでいて表現が心地よいとまで思いました。

また、震災の記憶が(私は実際には体験していないのにも関わらず)蘇ってきたような気がして、空恐ろしくなった作品でもあります。

クラシックを聴きながら読んでみたいな、という作品でした。

 

そして、一番最後に収録されているのは坂口安吾の「不良少年とキリスト」

この作品は、太宰の死についての作品です。

太宰が死んだことに対して感じたこと、太宰という人間に関しての分析、そして太宰のフツカヨイについて。

太宰へのイメージの変化で始まったこの『コーヒーと随筆』は、太宰の死への文章で終わります。

太宰と坂口安吾の仲が少しですが窺い知れる作品だと感じました。

すごい軽い感想に見えますが、太宰に死んでもらいたくなかったんだろうな、と。

 

ちなみに、この本は「文豪ストレイドッグス」が好きな方には特におすすめです。

『不良少年とキリスト』では、太宰、織田作、安吾が出てきますし、他にも何作もキャラクターとして文ストに出てきている人の作品が収録されていますし。

 

とにかく、この本は久しぶりにここまで惹き込まれる本にあった…というレベルで面白かったです。

随筆の縛りの中だと、一気に一番好きな本になったかも

ぜひ読んでみてください。

 

この編者さん、『コーヒーと小説』という本も出版しているそうです。これは、小説のアンソロジー。こちらもコーヒーが合う作品としてとても面白いのだとか…。

見つけ次第読んでみたいです!

残念ながら、『コーヒーと随筆』はコーヒーとともに楽しめなかったので、『小説』はコーヒーも一緒に楽しんでいきたい!

 

 

ということで、『コーヒーと随筆』の感想を書いてきました。

異彩を放つ作品群の並べ方、まとめ方からも、この本の素晴らしさ、編者の方の素晴らしさがわかるかと思います。

序文、結文も必読ものです。ぜひ、この傑作を読んでみていただけると嬉しいです。

 

新しいものは古くなるが、いいものは古くならない。この本に掲載されている随筆は全て半世紀以上前、中には百年以上前に書かれたものもある。これらの作品が、それを証明している。

(序文より)

 

どんどん移り変わっていくこの時代の中で、変わらないコーヒーの味と変わらない随筆の良さを味わっていただければな、と思います。

読めてよかったですし、この編者の方に心からの感謝を伝えたいです。

この方のホームページにも綺麗な文章がたくさん並んでいます!

www.travelers-company.com

 

最後までお読みくださりありがとうございました。この本が読めたことが本当に嬉しかったです!次からのシリーズ本も読んでいきたいです。