うぐいすの音

17歳の女子が運営しているブログ。本のレビューなどしていきます。

片山ユキヲ「花もて語れ」を読んで

 こんにちは。この前薪ストーブのために小枝を集めていたら、昼過ぎなのに枝に霜がついていてびっくりしました。初めて迎える冬ですが驚きの連続で面白いです!

さて、今回は、読書レビューをしようと思います。この前近くの図書館で見つけた漫画で、面白くてすぐに読んでしまいました。片山ユキヲさんの「花もて語れ」という漫画です。この本は「朗読」をテーマとした漫画です。「朗読」と聞いてみなさんはどんな印象を持つでしょうか… 私は、小学校の時に授業で数回やったのみで、地味な印象しかありませんでした。黙読の方が早いし自分のペースで読めるのに、なぜわざわざ「朗読」を聞かなければいけないのかと思っていました。

 この本を読んで、その印象はガラッと変わりました。朗読は、聞き手の脳に映像として文章を投影するような力を持っています。自分の中で解釈した物語を自分の想像と照らし合わせて様々な工夫をしながら読む。これにより、聞き手が想像できる範囲が膨らみ、場面を理解し読み手の考えも受け止めることができます。

 主人公の佐倉ハナは就職で上京してきたとても人見知りな女性です。小さい時から想像することが大好きで、あるきっかけから東京で朗読を始めます。朗読が趣味としった周りからは、「朗読なんて」と馬鹿にされますが、仲間とともにその印象を覆し、持ち前の想像力を生かして朗読を進めていきます。

 例えば、宮沢賢治の「やまなし」という本を知っていますか?この本は私が小六の時に教科書でも勉強しました。二匹のサワガニの会話などを描いた作品です。この作品は私も授業で朗読しましたが、二匹のサワガニの年齢などは全く考えませんでした。でも、ハナたちは年齢やそれに応じたボキャブラリー、言い方などを想像して作品を読んでいます。

 また、同じく宮沢賢治の「注文の多い料理店」。この作品は英語の教科書にも出てくるくらいなので知っている人も多いと思います。この作品は2人の紳士が山猫に騙されかける話です。「花もて語れ」では、この紳士たちの性格の違いまでが描かれていました。私は考えもしなかった紳士の性格の違いが、説得力を持って漫画に描かれています。

 このように、考えもしなかったところまでをハナたちは想像し、朗読します。それにより、私たちはハナたちの朗読を聞いているかのように感じ、物語の中に入り込みます。当然音声は聞こえてきませんが、絵によりイメージをどんどんぶつけてくる漫画です。ハナの考えや聞き手の考えなどの色々な情報が漫画から伝わり、物語に惹きつけられ、まるで私たちも聞き手かのように感じます。

 朗読のみではなく、ハナたちの葛藤や悩みなどが等身大で描かれます。朗読する物語により意思が通じあったりと、「花もて語れ」の中では物語が「朗読のための手段」としてだけではなく「意思を伝え合う道具」としても使われます。だからこそ、物語がもっと理解できます。私は宮沢賢治などの文学作品は何を言いたいのかわからず苦手だったのですが、この作品を読んでからは「蜜柑」や「風博士」など漫画に出てくる作品の一部を、読んだり朗読を聞いたりしました。朗読に興味を持つことはもちろん、出てくる作品たちに対しても新しい印象を持てる漫画だと思います。13巻と少し長めのシリーズものですが、漫画なので早く読めます。私は本当にはまってしまって1日で読むことができました。読みやすいのでぜひお読みください。朗読に興味があるという人は多くはないかもしれませんが、だからこそ面白く読めると思います。

 最後までお読みくださりありがとうございました。学習漫画にもなり得る本当に面白い漫画を紹介させていただきました!