うぐいすの音

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又吉直樹『劇場』読みました!

 こんにちは。この頃はもう暖かくなってきていて、過ごしやすいです。もう雪も降らないと思うのでタイヤも変えることになり、季節の変わり目だな、と感じています。

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 さて、今回は、読書レビューを書いていきます!!この前、又吉直樹さんの『火花』という作品を読んだ感想を書きました。そして、つい昨日又吉さんの二作目の『劇場』を読み終わったのでその感想を書いていきます!

 

chirpspring.hatenablog.com

 

目次

 

『劇場』のあらすじ

 それではまず、劇場のあらすじを大まかに書いていきます。

主人公は中学生の時から演劇に目覚めた「永田」。彼は高校卒業後に仲間の野原とともに上京、劇団『おろか』を設立するも客足は重く、内容も酷評されている貧乏人です。

 その永田に突然街中で話しかけられ、恐怖しながらもカフェを奢ることになり、そこからしばらくして付き合うことになったのが「沙希」です。彼女は青森県から上京してきた人で、女優になることを目標としながら服飾大学に通っています。

 

 二人が最初に出会った時、永田は沙希に何かを感じて注視してしまいます。その視線に気づき、沙希は去ろうとしましたがその前に永田が「靴、同じやな」と声をかけます。同情心からか沙希は永田にカフェで奢ることとなり、互いの素性を話しました。

 そこから2人は連絡先を交換し、その後なんやかんややり取りを経て付き合うこととなりました。永田は自分に甘い沙希に甘えまくり、沙希の家に居候し生活費等も払いませんでした。脚本を執筆するときと稽古中はバイトもできないので、永田は借金を抱えていきます。

 二人は最初はいい関係のように見えましたが、主に永田の行動が原因で亀裂が走っていき…といった作品になっています。

 

劇場

劇場

  • 作者:又吉 直樹
  • 発売日: 2018/01/10
  • メディア: Audible版
 

 

 

共感できない主人公、でも、全てが嫌いとは言えないからこそのリアリティ

 『劇場』は、永田の視点で書かれた一人称視点の物語です。私たちは、永田の気持ちや見方で世界を知っていくことになります。たいてい、こういう一人称の作品ではその主人公の気持ちに寄り添いやすくなったり、人物の気持ちが読み取りやすくなります。でも『劇場』は、そういった作品ではありませんでした。

 

 例えば、沙希の母親が送ってくれた食料。小包が届いた時の会話です。

「お母さんが、小包送っても半分は知らない男に食べられると思ったら嫌だっていってたよ」沙希が上機嫌の調子で僕に言った。

 二人で少しだけ酒を飲んでいたので、普段なら言わないようなことが、ツイキチから出てしまったのだろう。

「なんで、そんなこと言うん?」

沙希はガムテープを剥がす手を止めて僕を見た。自分を嫌がっている人から与えられたものを食べて生きることほど惨めなことはない。

〜中略〜

「俺、沙希ちゃんのおばはん嫌いやわ」

  このシーンでは、沙希の母親が、娘と会ったこともない娘のヒモのような存在のために食料を送っています。そりゃあ、母親からしたら永田のような存在、迷惑ですよね。でも、その言葉に込められた小さな皮肉に永田は反抗する資格があるのでしょうか。

 私は、親に「自分ができないことを人に注意するな」と言われてきました。それは当然のことだし、常識です。自分が色々面倒を見てもらっている分際で、何か偉そうに注文をつけるなんて普通はできません。(と言いつつ、私が完璧にできているわけでは全くないのですが。)

 普通なら、こう言ったシーンで「いつもありがとう」とか、「迷惑かけてごめん」とか、相手を気遣う言葉が出てくるはずです。そう言う常識を私は持っています。でも、永田が出した言葉は「俺、沙希ちゃんのおばはん嫌いやわ」でした。娘のために送った食料を自分も食べといて、嫌いって言う。しかもその人の娘に向かって!全く共感できなかったです。

 

 正直、この物語は読んでいて共感できませんでした。永田があまりにもクズで、沙希ちゃん早く別れて!と思いながら読んでいました。でも、永田はクズなはずなのに永田なりの純粋さと言うか、一生懸命さが受け取れるような描写も多くあって、一方的に永田が悪い、とは言いにくい部分も。と言っても結局は永田が悪いので、よくわからないモヤモヤが残ると言ったかんじでしょうか。

 『火花』の神谷さんはアホと決め付けたくても少し同情すると言うか、すごい部分も見られるキャラクターでした。この永田さんは、終始クズだし、なんとかしろよとずっと思うんだけど、それでもどこか良い面というか、純粋な面が見受けられる。

 現実世界でも、全く良いところが見つけられなかった人に近づいてみたら良いところが見つかったり、仲が良かった人たちが気がついたら陰湿な悪口をずっと言い合っていたり、人間て本当に一面だけで語れないな、と思います。それとはアホの度合い(神谷)もクズの度合い(永田)もかなり違うようには思えますが、どこか一方的に悪にできないところがリアルです。永田みたいな人が、本当にいそうだな、と思いました。

 

永田と沙希のやり取り。こんな関係性でも、幸せな人は幸せなんだな。

 一番永田に失望したのは、沙希に「実家の仕送りも無くなったから、光熱費を払ってもらえないか」と言われた時に

「人の家の光熱費を払う理由がわからない」

と言ったところです。それに対し沙希は、

「人の家の光熱費払う人いないよね、うけるー」

と返します。いや、全然うけてないし、本当に永田がクズ…

永田目線なため、さっと文を眺めているとそこまでひどい男にはみられないかもしれません。でも、永田の思考などをすべて切り離して発言や行動などのみをみてみると、予想以上にひどい男でした。

 

 沙希の周りの人も、「早く別れた方がいい」と沙希を永田から引き離すとします。沙希がお母さんのような立ち位置というか、優し過ぎるため、都合のいい存在として扱われているようにも感じます。途中の沙希のセリフには、びっくりしました。

「気づいてないと思うけど、永くんって、わたしのこと褒めてくれたこと一度もないんだよ!」

 

え…、この二人って付き合っているんんですよね、それなのに褒めたことがないって、正直信じられません。しかも沙希は沙希の友人に永田のことをべた褒めしています。もちろん話を聞いた友人からは、「最低なやつ」と思われていますが、それでも沙希は永田が好きで、尊敬していて、彼のために我慢しているんです。

 永田の中学からの仲間である野崎も、劇団の仲間(元仲間)たちも、沙希と別れた方がいいと進めます。次第に沙希も酒の量が増え、精神的に病んでいきます。

 最終的に沙希は実家に帰り、地元で就職先を見つけました。

 

まとめ-なんとも言えない後味でした。共感できないからこそ、面白くもある。

 読んでいて、なんでこうなるのかな、と何回も思った作品でした。

主人公はただ単純に、自分でなんもできないくせにプライドは高くて人の言うことを聞かない人間。

沙希はいい子だけど、人に強く言えない弱い人間。

永田が悪いことが多いですが、二人に対していろいろなことを言ってくる外野たち。

 外野がうるさいと思ったこともあったし、外野がいなければもっと二人は幸せだったんだとも思います。でも、そうなると一方的に沙希が搾取され続ける未来しか見えないので、結局これで良かったのかも、と。

 

 登場人物の設定や、外野の筋の通った言葉から、リアリティのある作品だとは思いました。でも主人公にもヒロインにもあまり共感できませんでした。共感できる人がいないと、ふわふわしながら読んでいる感じになると言うか、現実味が薄くなります。それなのに、主人公もヒロインも、どこかにいそう一面的ではないキャラクター。

 そのちぐはぐ感というか、少し離れたところ(語り手の気持ちになれないため)から人の喜怒哀楽を眺めている感覚というか、形容しがたい読了感でした。

 

 ここでは何回も「共感できない」と書いていますし、あまり面白くなさそうに見えるかもしれません。でも、共感できないと言いながらも結局は全部読んで、色々と考えることができました。それは、単純に本が面白いというか、続きがきになるというか、ほっとけないような文章だったからです。登場人物のみにくい部分が全部描かれているんだけど、だからこそこの後どうなるのかが気になるし、ほっておけません。こう言った作品も、得意ではないけど読めて良かったです。

 

 最後までお読みくださりありがとうござい明日。今日は又吉直樹の『火花』について書いてみました。ぜひ、気になったら皆さんも読んでみてください!二人に共感できる、という意見もあると思いますし、捉え方は人それぞれなので時間のあるときにでも読んでもらいたいです。