こんにちは。今日は、勉強を割としていたのですが、もう難しい…。高校歴史難しいです!
今回のブログでは、読んだ本の感想を書いていきます!
今回紹介するのは、重松清さんの『ゼツメツ少年』です。2014年に、毎日出版文化賞を受賞した作品です。
目次
作者のイメージ、物語のあらすじ
重松清さんは、いわゆる受験とか読書感想文とかに引っ張りだこの作家さんだと私の中では考えていて、最後には希望の見える作品をよく書くというイメージでした。
少し前に、重松清さんの『きみの友だち』を読みましたが、
この話は私の中でもかなり好きな作品で、読んでいて自分で考えるきっかけが多い、綺麗な本だな、という感想になりました。
この本のあらすじを紹介します。
簡単に話すと、「センセイ、僕たちを助けてください」という小説家の元に届いた手紙から始まる物語です。
送り主は、中学二年生のタケシ。タケシの仲間は二人いて、それぞれ小学5年生のリュウとジュンです。
学校や家で居場所をなくした僕らを、「物語」の中に隠してほしい。でなければ、僕たちはゼツメツしてしまう。
不思議な手紙に答えて、センセイはタケシたちのことを綴り始めました。
ちなみに、場面はリュウの父親が主催している、化石の発掘イベントから始まります。このイベントは、いわゆる不登校の子どもたちを対象としたもので、3人ともこのイベントの中で出会います。タケシとジュンは不登校ですが、リュウは特に不登校というわけではありません。それでも、ある事情はありますが…。
この3人は、タケシの提案から「イエデクジラ」になって、家出を始めます。そこからの話は、タケシからの手紙とセンセイが書いた文章が交互に出てくる感じです。
感想:どう書くべきか、少し迷いますが…
こちらの話、感想を書こうとしたんですが、ちょっとどう書くか迷っています。
なぜなら、入れ子構造が重なっていて、しかも物語もあやふやなところがあるため、解釈を間違えているかもしれないからです。
なので、ここではネタバレは少ない、軽めの感想を書いていくつもりです。
前述したように、私の中で、
重松清さんは道徳的な教訓も含めていて希望が最後に見える少しウェットな本を書く
、という印象でした。
ですが、この本はその印象からはだいぶ外れていました。
まず、入れ子構造の重なりにより、物語の解釈が難しい。
どこからどこまでが現実で、
どこからどこまでが物語で、
どこにセンセイの脚色が入っているのか。
この世界はどの世界なのか。
そもそも、重松清先生とセンセイは同一人物なのか。
使い古された表現ですが、
ずっと読んでいる間モヤがかかっているような不安感、緊張感があり、
道を見失ったような気持ちのまま、不安になりながらも読み進める…。
そういった感じでした。
これも、多分狙ったことなのかも。
迷って、迷って、存分に迷って戦った挙句、登場人物たちがとる選択はなんなのか。
下手に感動モノにしないため、そして、下手に設定を軽くしないため、あえてこういった形の本にしているのかな…と思いました。
最初は能天気に読み進めていましたが、
だんだんと結末の選択肢が減ってくるような気持ちになって、
最終的には自分がしていた勝手な期待に裏切られたというか、現実は理想とは違う、と突きつけられた気持ちになったというか…。
生きていることが辛くなる、そんな場面に直面したタケシたちが、「ゼツメツ」しないために選んだ家出と、そのあとの選択。
*明言はしていませんが、結末がわかるような言い方を含みます。
読みたくない方は、二段落飛ばしてください。
こういったストーリーの鉄板というか、理想は「この長い家出の後で、強くなった少年たちが戻ってくる」という形なのでしょうが、ことごとく裏切られました。物語があやふやなぶん、なんとかわかるところには寄り添おうとした結果、逆にラストで裏切られた感じも強かったです。
これは、結局ゼツメツしたのでしょうか、しなかったのでしょうか。周りへの影響を残した、という意味ならゼツメツではなかったのかもしれません。だけどその、私の読んだ「周りへの影響」というのも、どこまでが想像で、どこまでが現実なのか。やりきれないというか、逃げ場のないラストで、後味がいい、とは言えないです。
ラストの方のシーンは、セリフが真に迫っていて、読んでいて何か重たいものが胸に乗っかっているような感覚でした。小説の登場人物たちは、ゼツメツしない為にセンセイに手紙を送って、見事それに成功したのかもしれないですね。
なんというか、嫌いな作品ではないんです。でも、読んでいて辛かったのは確かです。
こういう親もいるかもしれないし、こういう友達/同級生もいるかもしれない。
いや、実際にいるんでしょう。
そう思うと、ただ辛い、よくわからない、という言葉でまとめちゃいけないのかもしれないです。
やりきれない、という言葉も簡単には使いづらい読後感でした。
やっぱり、どこかリアルというか、情景がすごく思い浮かべやすいんですよね。
心理描写と背景描写のおかげでしょうか。
エピローグでわかることは多いので、
ページはめくりたいのに、ラストが怖い、という人はエピローグを希望にして読んでいってくれると嬉しいです。
本の中の言葉をいくつか
多く書くとごっちゃになりそうなので、本の中に出てきた言葉をいくつか紹介して終わりに近づけようと思います。
これは、タケシが手紙に書いたこと。
大切なのは想像力です。
信じることも想像力です。
これは、リュウの父親の言葉。
生きてて欲しかったんだ
生きててほしい……ずっと、ずっと、生きててほしい
生きるっていうのは、何かを信じていられるっていうことなんだよ
そしてこれは、エピローグでの言葉。
後悔は消えない。人生は、たとえ物語の中でも、すべてが思い通りにはならない。そこだけは譲れないし、そうでなければ、飽きもせず小説を書き続ける理由など、どこにある?
一つ一つ、物語を読んでいるからこそ心の中に入ってくる言葉です。
考えていて、自分の想像力を試されるような感じも少ししましたが、基本的に重いテーマなので、下手に一言にはまとめられません。
「助けることはできなくても、救うことはできると思うよ」の言葉を作中に残してくれたのは、この話に希望が欲しかったからでしょうか。
最後に…:読んで後悔したことが一つだけ!
読んでいて、後悔した点が一点あります。
この本の中には、重松作品の他の登場人物がたくさん出てきます。
正直、少し前まで敬遠していた重松作品のため、ちゃんと記憶にあるのは直近で読んだ『きみの友だち』しかありません。
だからこそ、これは重松作品を多く読んでいれば「あっ!この人!」という気づきがその分多く得られる本だと思います。
今までに会ってきた登場人物の未来の姿が、少し覗けるかもしれませんよ!
また、重松作品以外にも色々な作品が出てきます。
私は知らないものも多いと思うのですが、
梶井基次郎の『檸檬』と、映画の『ET』(多分…)には気づきました!
これはなんかの設定を借りているのかな?といった現実離れ感もあったので、多分そう感じたところは他の作品をオマージュしているんだと思います。
なかなか救われない物語ではありましたが、エピローグに書かれている経緯を読めば、その意味では救いが見つかるような気もしました。
切ない物語ではあるけど、読んでいて色々と考えさせられる作品でした。
最後までお読みくださりありがとうございました。少し本のイメージがマイナスに傾いていないか、それが心配です。どんな人に読んでもらいたい、と言えればいいのですが、それも少し難しいというか、思いつかないので、興味を持った方は手に取っていただけると幸いです。