こんにちは。ISAKのBuddyプログラムも始まり、着々と夏に近づいて行っている気がします!とても楽しみですが、今やっていることがその時までに全部終わるか…。ちょっと心配です(笑)
今日は、ブクレポを書いていきます。紹介するのは岸本佐知子さんの『ひみつのしつもん』です。こちらは、エッセイとなっていて今回初めてこの人の作品を読みました。
目次
本の内容、作者についてなど
今回は、先ほど書いた通り岸本佐知子さんの『ひみつのしつもん』について。岸本佐知子さんは、翻訳家、エッセイスト、アンソロジストとして活動されています。
ニコルソン・ベイカーの『中二階』を訳したのは、彼女です。また、『ねにもつタイプ』というエッセイで講談社エッセイ賞を受賞されています。初のエッセイは『気になる部分』で、『ねにもつタイプ』は2作目の作品です。
この『ひみつのしつもん』は4作目のエッセイで、2019年に発刊されました。
この本、感想をいつも通り書いていこうとしたんですが…難しいですね。
なんというか、この本かなり独特というか、書きにくいんです。
内容がとても印象的だったり、考えさせられる…というわけではないんですよね。
全体の感想は、とても書きにくいです。なので、ここでは印象に残った話をいくつか出していきたいと思います。一つの話は、挿絵も含め大体4ページぐらいです。
50個以上の小話が集まったもので、それぞれの小話は過去に彼女の連載で紹介されてきたものとなっています。
面白かった作品No,1 『名は体を』
面白かった話はいくつもありましたが、まずは『名は体を』という作品。
名前とその人の関係、ということを取り上げ、それに関する考えを綴っています。
私などは桃が好きだから、もしなんらかの理由で自分の名前が急に桃井や桃川に変わったら、 きっと朝から晩までつばが湧いて仕方がないのではないかと思う。
----
たとえば、海老アレルギーなのに海老蔵を襲名してしまった、ということも起こり得るのではあるまいか。名乗ったり呼ばれたりするたびにアレルギーの嫌な思い出が蘇り、つらくはないだろうか。それともそこは芸の道、血の滲む努力の末に精神的な隔壁を形成し、名前と自我を切り離すことに成功するのだろうか。しかしそれでは名前とともに受け継いでいくはずの芸が、いつまでも身につかないということになりはすまいか。心配は尽きない。
----
それとも、何もかも完璧な優等生が「出木杉くん」であるように、宇宙人に居候される男子が「諸星あたる」であるように、ムカデに返信する会社員が「ザムザ」であるように、宇宙に行くキャラだから「星出さん」なのだろうか。この世界は本当はペラペラした作り物の書き割りで、見えないどこかで誰かがそういうことを全部決めているのだろうか。名は体を表しすぎている星出さんの名前を見るたびに、「はは、おもしろ」と思った後で、なんとなく体のどこかがスウスウするのは、そのせいなのだろうか。
うーん、、、真面目に感想を書くと、
同じようなことは考えたことがあります。
それをもっと例を出して言葉を紡いで書いたものだから親しみがわくのでしょうか。
海老アレルギーの海老蔵さん、、桃が苦手な桃川さん、、
実際にいそうで、でも見つけるのは少し大変そうで。
想像するのがちょっと楽しくて、でも確かに納得できる。
そういった文章を書くのが、本当にうまいなと思います。
桃が好きな桃井さんから、宇宙に行った星出さん。そこから海老アレルギーの海老蔵さんに飛ぶのも面白いし、しかも海老が苦手な海老蔵さんを心配して対抗策を探しています。
優しい人なんでしょうね…。なんか、この人は発想力が豊かなんだろうな〜とも思いますし、同時にそういったことを考えた後で文にできる、そういった文章力と記憶力もすごいんだろうなと思いました。
面白かった話No.2 オリンピック猛烈批判⁈『爆心地』
そして、『爆心地』という話もあります。こちらは、オリンピックの話について。
私の度重なる抗議にも関わらず、今年もまた冬季オリンピックは開催された。
朝から晩まで勝った負けた勝った負けた勝った負けた、メダルを取ったの取らないの取ったの取らないの取ったの取らないので世の中が埋め尽くされる地獄の何週間かが始まってしまったのだ。
しつこいようだが、私にはどうしてもあの人たちが正気だとは思えない。
冬は寒い。ただ屋外に立っているだけで大変に辛い。下手をすると死ぬ。そんな生物にとって過酷な環境下にわざわざ重装備で出て行って、わざとこぶをつけた危険な斜面を滑り降りたり、ばかに高い坂を滑降したあげくに宙を飛んだり、ミャーーーなどと叫びながら石を押し出したりと行った、普通の生物なら決してやらない数々の異常行動をとり、あまつさえそれらに順位までつけて喜んだり悔しがったりするのだ。やほうもやるほうだが、それを見て同じように喜んだり悔しがったりするほうもするほうだ。
この後もどんどん続きますが、これだけでもかなりのインパクトなのではないでしょうか(笑)。
私も運動は苦手ですが、フィギュアスケートなどは割と見ますし、好きといっても大丈夫なレベル…なはず…です。
まあでも言われてみたら、
確かに「生物にとって過酷な環境下」だし、
「普通の生物なら決してやらない数々の異常行動」かもしれないし、
オリンピックが苦手な人にとっては「地獄の何週間」かもしれません。
私も家にテレビがない上、特に夏季オリンピックはあまり興味がないため「面倒臭い」と感じることは正直ありましたが、
それでも「スポーツの祭典、平和の象徴」としてオリンピックを認識してました。
作者の岸本さんは、
作中の姿をそのまま鵜呑みにするとかなりの出不精&運動嫌いと見えますが、
そうなると平和の祭典も「地獄」になるんですね。
そういう風にオリンピックを見たことがなかったので、かなり面白かったです。これが書かれたのは、東京オリンピックが予定されていた2020の数年前らしいですが、今の状態を岸本さんが見たらなんていうのでしょう。
通常の段階で「どうしても正気だとは思えない」なら、今の状態に対する意見もちょっと聞いてみたいな〜と思いました。
言葉自体は過激なものを使っているのかもしれませんが、前後の雰囲気からも全く人を傷つけるような言葉はありません。
もしかしたら、オリンピックが好きな人や、桃が嫌いな桃川さんは少しもやっとするところもあるかもしれませんが、大爆笑する話というよりは「ニヤニヤ」「くすくす」と行った擬音が似合う作品なので「モヤっ」の程度も大きくはないでしょう。
まとめの感想:個人的な普遍性…とは?
こういった風に、
「あ、ちょっとわかるかも」
「それ思ったことあるわ〜」
「え、そんなこと考えるんだ」
「あ〜、なるほど、、まあ納得はする」
と行った、地味に色々考えちゃうような事柄を書いているので、全体的に面白かったし、楽しめたのですが、全体での感想を書くのは難しい作品でした(笑)。
この本は、母親が読んでいた本で、いくつかの話を教えてもらって面白かったので読んでみました。母親は、「あまりに個人的なので普遍性を持っている」作品だと言っていました。
つまり、作者が取り上げている事例自体は全く普遍的なものではないんですね。
落としたネジの話、なくなったハガキの話、読んだテニス漫画の話。それは私に通じるものではありません。
でも、そういった個人的な話が詳しく、生々しく書いてあるからこそ、
「あれ、私こんなことあったような…」という認識になってきます。
だからこそ共感もできるし、面白くなる。
「個人的だからこその普遍性」って、おかしいかもしれないけど確かにこの作品にあった言葉だな〜と思いました。
ということで、今回は岸本佐知子さんの『ひみつのしつもん』という本を読んできました。
ここでは2個しか取り上げませんでしたが、50個以上の話がこのエッセイ集んは詰まっています。
エッセイというよりかは、どこかショートショートのような…。
それでもやっぱりエッセイのような…。
実際エッセイなんですが、読んでいてとても楽しめました。
こういった形の本も読んだことがなかったので、面白かったです。
ぜひこの方の作品を他にも読んでみたいです。講談社エッセイ賞をとった「ねにもつタイプ」という本も読んでみたいですし、翻訳した訳書も機会があったら読んでみたいです。
ただ、読みたい本がたまりにたまっているので、とりあえずはまたの機会に、かな…。
ゆるくて独特な「岸本さんらしい」作風と、全話についている秀逸なイラストが本当にあっていました。
イラストも、絶対注目です!
話の内容をそのまま表したような、時々シュールなイラストで、みていて楽しめました。
…岸本さんらしい、って1作品しかまだ読んでいないんですが、それでもこう言いたくなるような空気感ではあります。好きな人は多分すごいはまるし、ちょっとハマれなかった人も一定数いるかもしれません。好き嫌いは割とはっきり出るかも。でも、まずは挑戦です!
最後までお読みくださりありがとうございました。岸本佐知子さんの『ひみつのしつもん』の感想を書いてきました。ぜひ読んでみてください!