うぐいすの音

17歳の女子が運営しているブログ。本のレビューなどしていきます。

読書の秋!10月読書本9冊紹介

 こんにちは!今日は、読書の秋ということでここ数週間で読んだ本をまとめていこうかと思います。10月に読了した本ということになるのでしょうか。10月もまだ終わっていないですが、これからあまり本も読めそうにないのでとりあえずは10月読了本としてまとめていきます!

 

 

1週間の秋休みのあったこの10月、久しぶりに学校とは全く関係のない本を読んでいました。基本は軽い本ばかりですし、読みきれなかった本もたくさんあるのですが、やっぱり本が好きだなあと実感した時間でもありました。

 

 

 

日本の脱獄王 -白鳥由栄の生涯 

この本は、以前両親が網走に行った際に事前勉強として読んでいた本。

話を聞いていれば面白そうだったので、図書館で見つけて読んでみました。

この本は、稀代の脱獄王白鳥由栄の人生を、当時を知る者の証言から描いたノンフィクションです。人生で4回脱獄しているんですが、どんな絶望的な状況でも必ず監獄から逃げ出しています。白鳥由栄用に作られた監獄からも、手枷足枷をはめられていても、必ず脱獄はできないと言われていた網走からも脱獄をしています。

しかも、単純に身体能力が高いというだけではなく、さらっと「手足の裏の皮膚を伸縮させ吸盤のように」できたり「身体中の関節を自由に外すことが」できたり、読めば読むほど人間らしさを失っていきます。しかも、脱獄している理由もなんとなく格好良くて、毎回自分に対する扱いが人間に対するものではない、などのなんらかの抗議行動として脱獄。

途中から、これは犯罪者の話なのか、英雄の話なのかわからなくなってしまいました。とは言いつつも、犯罪を犯しているからこそ20余年も収監されているというもの。5回目の刑務所人生では、やっと普通の囚人と同じように扱われたということで脱獄をすることもなく模範囚として過ごしたそうです。1935年に初めて入獄してから1961年に仮釈放されるまでの間に、街並みは大きく変わっていたのではないでしょうか。脱獄中もどんどん景色が自分の知っているものと変わっている、といった描写がありましたが、東京オリンピック間近の東京で出所した後家族と会うことなく死んでいった白鳥のことを考えると、なんとも言えない感情になります。

とりあえず、白鳥由栄のように波乱万丈の刑務所人生は絶対に送れそうにないので、罪は犯さず捕まることのないようにしようと思った本でした。

 

都会のトム&ソーヤ 18~20巻

秋休みにまず読んだのは、都会のトム&ソーヤ3巻分でした。ずっと好きだったこのシリーズ、気づいたらもう20巻まで刊行されていたということで慌てて読んでいなさそうな新しい本を3巻分借りてきました。

 

18巻は主人公2人と個性的な6人で8人チームを作り、ウォーレン・ライト(稀代のゲームクリエイター)が作った時代を超越するR・RPGをプレイする内容。どこか秋の匂いがする、懐かしさを感じる書き方にどんどん惹き込まれていきました。地味に上手い文章を書くコツなども描かれていて、読んでいて面白かったです。この人は天界の緩急をつけるのが本当に上手で、気づけば一冊終わっていました。

 

19巻は19BOXというジュークボックスから出てくる7つの物語が描かれた本。この話は、なんとなく今までとは毛色が違い、最初に読んだときは「あれ?短編よりになってきたのかな?」と違和感も感じたんですが、その違和感の正体が構成からくるものではないことに途中から気づきました。この本、かつて児童書ではなかったほどの「黒はやみね」が現れています。高校生になった今でも読むと背筋がゾワっとするような読後感。そう言えばこの人はミステリーと赤い夢に囚われた人なんだって改めて思い出しました。

 

20巻は内藤内人の同窓会。過去の物語と現在の物語が交差しながら進んでいく、また今までとは少し違ったタイプの内容でした。初めてトム&ソーヤではなく、トムvsソーヤになっており、とりあえず内人が無事に生還できるかをハラハラしながら見守っていました。20巻目という節目で、登場人物たちの人間関係が初期と比べてどれほど広がったのか、どれほど変化したのかも少しずつ見えてきて。なんとなーく今までとは毛色の違った考え方をする登場人物も現れてきたりして、面白かったです。あと、今までで一番内人のおばあちゃんの知恵が現れていたような気もします。

 

都会のトム&ソーヤ、焦って3巻分ありて読んだところ、18巻も19巻もどちらも読んだことがあり、20巻のみ初読でした。内容を知っていても知らなくても、どんどん中に惹き込まれていくのがはやみねさんの特徴な気がします。

20巻もいっていたらもう内容が繰り返しになっても良さそうなのに、毎回違った形の内容や読後感を提供してくれる、安心どころか想定を超えてくる作家さんだな、と。正直14~16巻くらいで、面白いなとは思いつつも少し話が水戸黄門的な、堂々巡りになりかけてきたかなとか失礼なことを思っていたのですが、やっぱりはやみねかおるさんの本は最高ですね。

とても好きなシリーズ、終わるまでずっと追いかけていたいです。小学高学年の時から読み始めて、今まででもう6年くらいかな。今ブログを見返したら、ブログを始めた5日目にちょうど1巻目の紹介記事を書いていました。

 

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私の年齢はどんどん登場人物の年齢を追い越していくのに、彼らの年齢は変わらないままで。それなのに、もう後数年で、近いうちにはやみねさんは「風呂敷を畳んで」いくのでしょう。なんというか、後書きなどでそうした最後を予感させるような文章を読むうちに、しょうがないとはわかっていてもやるせ無い気持ちになってしまいます。

 

ぼくらの先生!

ということではやみねかおるさんについて書いたので、この繋がりでもう一冊。2008年に刊行された『ぼくらの先生!』という本を読みました。

この本も読むのは2回目なのですが、教員を定年退職した男性が奥さんと一緒に昔のいろいろな出来事を振り返るという内容になっています。この本は児童書ですが、大人や少し子供を「子供」として捉えられる年齢になった人に読んでもらいたいな、と思います。はやみねさんの児童書によくあるエンタメ色は他の作品に冒険中なのか、一番落ち着いた、クセのない連作短編集でした。隠居生活の中で昔を振り返って思い出すキラキラとした日々、少しの後悔、そして奥さんとの日々への感謝と愛情。さまざまな感情が穏やかに過ぎていく、そんな本でした。

しかも、ちょっとミステリ色もあり、安楽椅子探偵のように奥さんがどんどん謎を解いていきます。すっごく面白いというか、この作品のスパイスになっていると思うんですが、それと同時に教員の奥さん、しかも多分専業主婦?って本当に大変だと思うんです。熱血であればあるほど家庭はほったらかしにされますし、この小説の男性は学校のことを絶対に家では話さないようにしている。それでもずっと連れ添ってきた後で発する鋭い言葉、ハッとする言葉にはいろいろな感情や気持ちが詰まっているんだろうなと思います。

あとがきを見たら10年もかけて刊行した本なのだとか。

改めて、小学生、中学生、高校生、そして大人の目線で物語を描き、全年代の読者を感動させるこの人の凄さを感じました。

 

 

琥珀のまたたき

次に読んだのは、この頃大好きな小川洋子

この人の作品を今年の夏頃に読み始め、その美しさに感動し、次はこの本と手に取ったのが『琥珀のまたたき』です。描かれているのは、外界と遮断された生活を送る三人の子供。彼ら兄弟は母親によって家に閉じ込められ、その中で自分たちの世界を作り出します。

いろいろな言葉が当てはまる本だな、と思いました。

静かで、激しくて。美しくて、目を背けたい穢らわしさもあって。悲惨で幸福で。包み込まれるように優しくて、切り裂かれるように残酷で。

その全てを一冊の中で味わうんですから、すごいエネルギーを使います。

淡々と進んでいく、一種の虐待を受けている子供達の物語。なのに優雅で幸福で優しい、不思議な空間がそこにはあります。歪な愛というか、なんというか…。読後感は清涼でもありながら、一抹の不安や緊張感、モヤモヤとした霧が見えるよう。行方不明になったオパールのその後を想像してしまいます。

 

小川洋子さんの魅力は、その美しさにあると思います。ストーリーもそうですが、使われる言葉や表現、流れが美しくて、すっと頭の中に入ってくる感じが好みです。語彙の選び方と言うか、表現の仕方というか、水のような、それでいてずっと残る抹茶のような喉越し、旨みというか。

すっと通っていくのにそこにずっと残る、そんな印象を受けます。

 

この人の文章は、なんとなく幸田文の文章と似た印象を受けました。文体も書く内容も違いますが、物語の中の世界を綺麗な言葉で表し、映像で読者に届けるその過程が似ているような気がします。

二人とも言葉の使い方、選び方が優美で。

幸田文さんの本を読んだとき、日本語の理想的な使い方はこれなのか、と思いました。これほどまでに言葉が綺麗なものだとは思わなかったので、その時の衝撃は大きかったです。小川洋子さんは、言葉は多くのものを伝えるということを実感した作家かな、と思います。どの作品でも、目に見えるものも見えないものも、小川洋子さんの言葉を通して届けられればそれを目の当たりにしているかのような感動を覚えます。これからも読んでいたいな、この人の本を綺麗と感じられる人でいたいな、と思いました。

 

 

流浪の月

私、凪良ゆうさんの『流浪の月』を未だ読んだことはなかったんです。2020年の本屋大賞本、興味はあったんですが、いつも人気本は読むのに抵抗があるという天邪鬼精神でスルーしてしまっていました。そんな時に毎回思うのは、「やっぱりもっと早く読んでおけばよかった…」ということ。

なんというか、人気になるにはそれだけの理由があるんですよね。比喩を多く使ってると思うんですが、この人の文章も小川洋子のようにサラサラと流れる、流麗な文章だな、と感じました。この人の文章は水と抹茶というよりは、ホットのレモンティーのような印象。すーっと流れていって、最後奥の方でじんわりと存在感を放つ温かい文章だったように思います。

唯一分かり合える存在、性愛でも友愛でもなく、家族愛でもないけど、そこに存在しているのは「愛」で。なのに世間はそれを加害者と被害者として捉え、「善意」で二人を引き離そうとする。

自分が周りの人であれば引き離そうとするだろうなと思いつつも、この環境であれば誰でも主人公のように「愛」を守ろうとするだろうなとも思って。ひょんなことでこの主人公と同じことになってしまってもおかしくないような、そんな背景に危うさを覚えつつ、「理解する」ってどういうことなのかと考えながら読んでいました。

 

「普通」とは違うのに、そこにあるのは居心地の良い幸せな空間で。ちょっと『琥珀のまたたき』に通じるところもある気がしますが、「普通」とか「常識」ってなんだろうって考えさせられます。だって、主人公の目線だからこそ主人公に想いを寄せてしまうけど、自分がこの社会にいれば、多分主人公を傷つける存在になってると思うんです。誘拐事件の被害者が加害者を慕っているところを見れば、それに違和感を必ず抱いていると思うんです。そしてそれが間違っているとは断言できません。

事実は真実ではない、そう主人公は言っていますが、それを実際に認識するのはそう簡単なことではないでしょう。

自分を俯瞰しながら読み進めるような小説でした。月の神秘性や太陽に隠れながら輝くその姿がピッタリと当てはまるような読後感でした。

 

 

ウルトラマン現代日本を救えるか

最後に紹介するのは、『ウルトラマン現代日本を救えるか』。

この頃、原点回帰というか、幼少期に好きだったものをまた見るようになっています。『ウルトラマン』もその一つで、時々YouTubeウルトラマンの動画を探していました。そんな時に見つけたのがこの本でした。

弟の影響で一緒に見ていただけのウルトラマン、好きではありましたが別に熱意を持って見ていたわけではないですし、そこまで知っているわけでもありません。それでも楽しめましたし、勉強にもなりました。社会学って面白いなあという感想も。

要するに、1960年代のウルトラマンは科学に対する信頼感とそれに対する一抹の揺らぎを描いた「大きな物語」。1970年代はポストモダンとして、環境破壊だったり管理社会だったりの閉塞感を描いており、1980年代は日本が経済大国としてピークを迎えた時代だからこそ何かに対抗して活躍するウルトラマンは社会に受け入れられなくなります。1990年代にはバブルも崩壊しノストラダムスの大予言もあり、日本を絶望が襲います。そんな中で大いなる闇に対して復活するウルトラマン

 

もともとは超越者として現れたウルトラマンは、その後人間が変身するヒーローとなります。現代日本で、ウルトラマンのストーリーをもとに、私たちはどのように生きていくのかを解いた本です。日本の戦後史がなんとなく勉強できると言った意味でも面白かったです。

当時の物語が世相をどのように反映しているのかを書いてはいますが、個人的にはもう少し踏み込んでいても面白かったのかな、と感じました。メディアで取り上げられる作品には、大なり小なりその社会の問題や感情が表れています。それはウルトラマンだけではなくどんな作品でも同じだと思いますが、せっかくなら放映後にどれほどの影響を持っていたのかだったり、社会からの反応だったりも知って見たかったな、と。

それでも面白かったのには間違いありませんし、同時にウルトラマンシリーズをもう少し見てみようかな、という気にもなりました!

 

 

文豪の装丁

最後に紹介するのは『文豪の装丁』という本。

この本は、NHKの「美の壷」という番組で取り上げられ、その後本となった珍しい経緯を持ちます。紹介されているのは、江戸時代から昭和にかけて出版された様々な特装本の表紙や挿絵。カラーページが多いため本の装丁もしっかり確認することができます。

読んでいるだけで、著者や職人、関わった人の愛情が読み取れる、読んでいて嬉しくなるような本でした。

 

本というものが貴重だった時代、もしくは手に取れる人たちがとても限られていた時代、今書店ではあまり見かけないような独特な装丁だったり、洒落た特別な装丁が施してある本が、どれほど人の心を掴んだんだろうと思うと心が躍ります。

 

ちょうど以前参加した軽井沢ブックフェスティバル、ここでも本の装丁に携わっている方々の話をお伺いしました。

大手出版社でも装丁が綺麗な本は多くありますが、小規模の出版社の方が紙一枚一枚にこだわって、何年も熟成させて一冊を完成させるということが顕著だそうです。軽井沢ブックフェスティバルのレポート記事に、ちょうど今の気持ちを表した言葉が載っていました。

もちろん電子書籍は便利ですし、私も使います。使っている人が多いのも当たり前のことだと思います。

でも、やっぱり本の裏には本を届けたい人がいて、その中には紙を選んで、デザインを決めて、箔を押して、もしかした手作業の作業もあって、箱を作って。そんな背景を想像すると、そうした質感を含めた、触覚を含めた状態の本を受け取りたいな、と思うのです。

これから、多分どんどん装丁に特別力を入れた本を目にする機会は、少なくとも町の書店では少なくなっていくのだと思います。その代わり大衆用の本と、特装本の二極化が進んでいくのでしょう。寂しい気持ちも少し覚えつつ、どちらも楽しめるようになりたいな、と感じました。

 

 

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まとめ

ということで、今回は読んだ本をバーっとまとめていきました。このほかにも読もうとして途中で挫折した本、もしくは図書館に返却しなければいけなかった本などが何冊かあります。

その中でも特に読み切りたかったのは『戦争は女の顔をしていない』。有名な本ですが、今まで読んだことがなく…。少しずつ読み進めていこうとしていたのですが、多分一気読みをした方がしっかり読める本だったと思います。次に図書館に行った時の狙い目はこの本です!

これ以外にも、秋休み中に調子に乗って借りてしまった本や買ってしまった本が何冊もあるので、できるだけ読破できるように…。

 

本はどうしても「娯楽」に数えられますし、確かにそれを読まなくても生きていくことはできます。でも、本を読むことを諦めたくはないなあと感じました。特にこの一年全然本を読んでいなかったので、少しでも読もうと頑張ったこの10月。読書の秋はまだ一ヶ月くらいあります。長野県はもうかなり寒くなってはいますが、紅葉を楽しみながら読書できれば嬉しいです!

 

最後までお読みくださりありがとうございました。書き始めたらなんか長くなっちゃいましたが、それだけ自分の中に溜まったものが多かったのだと思います。興味を引く本がもしありましたら、ぜひお近くの図書館や書店でお求めください!